人は誰でも知らないうちに他人を傷付けている。存在するということは、誰かを傷付ける、ということと同じだ。だから、無意識の鈍感さよりは、意図された悪意の方がまだマシなのかもしれない
白鳥圭輔
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螺鈿迷宮は、大ヒット作、チームバチスタの栄光を世に送り出した海堂尊によるミステリー長編小説である。 大学生の主人公が、ボランティアと称して潜入する事になった終末医療専門病院で起こる不可解な死に対して挑むうち、その陰に潜む医療問題と悲しい現実、医療に従事する人々の複雑な想いが明るみになる作品となっており、海堂尊作品らしく、コミカルな語り口で物語りは進行して行くが、本作品で取り上げられている医療問題は、医療に関わる海堂尊だからこそ描けた深刻かつ重要なものとなっている。 チームバチスタシリーズと分けられているが、登場する人物や出来事はバチスタの物語に深く関わっており、バチスタシリーズの最終章ともいわれるケロベロスの肖像に、密接な関わりのある作品でもある。 本作品はフジテレビ系列で2014年1月からドラマとして放送され、新たに柳葉敏郎、水野美紀、栗山千明らが出演し、後に上映された映画、ケロベロスの肖像に物語りは引き継がれている。
「チーム・バチスタ」シリーズとは違うものの、一連の「桜宮サーガ」のうちの一作。読む順序としては「ジェネラル・ルージュ」の後になるだろうか。今回は田口の出番はほぼなく、物語の語り手は天馬大吉というなんともラッキーそうな名前を持つ(でも結構アンラッキー)医大生。記者であり幼馴染の別宮葉子が、彼に看護ボランティアとしての碧翠院桜宮病院への潜入を依頼する。碧翠院桜宮病院。ここには通常の病院だけでなく、ホスピスや寺院まで併設されている、終末医療の最先端を行く病院であった。同時に、曰く付きの病院でもあった。この物語は、生とは切り離せない「死」というものがテーマにあり、海堂氏ならではの読みやすさを保ちながらも、独特の重さがある。突然の身内の死、自ら願う死、病の結果訪れてしまう死…同じはずなのに、そこに至るまでの差が、死というものの意味に差をもたらす。ミステリーの体裁を崩すことなく、様々な要素が散りば...この感想を読む
白鳥圭輔
傷つけるとはどういうことなのかを言った一言