何度読んでも面白い小説 - 羊をめぐる冒険の感想

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小説レビュー数 3,368件

羊をめぐる冒険

4.134.13
文章力
4.25
ストーリー
3.88
キャラクター
4.13
設定
4.00
演出
3.88
感想数
4
読んだ人
18

何度読んでも面白い小説

4.04.0
文章力
4.0
ストーリー
3.5
キャラクター
4.0
設定
3.5
演出
3.5

目次

次になにが起こるかは想像できない

次々に出てくる愛すべき変なキャラ達

最後まで読み終わってもまたすぐ読みたくなる

この作品は最初からおかしなことの連続だった。親友からなぜか羊の写真が送られてきたり、彼女からの羊に関する冒険についての予言や実際に羊を探せという仕事の依頼、イルカホテルの出来事や彼女が消えたり。それは最初から遊園地のアトラクションのようにいろいろなことが起こり、最後まで誰にも予想のつかないこと続いていく。そして独創的な世界を読み進めていくうちに私はどんどん引き込まれてもいく。私だけかもしれないが前作までの「1973年のピンボール」、「風の歌を聴け」では文章は同じくらい良かったがここまで作品に引き込まれたのはこの「羊をめぐる冒険」からのように思える。

これは独創的な愛すべきキャラたちについてもそれは言えると私は思う。「1973年のピンボール」、「風の歌を聴け」までに鼠やジェイのキャラたちは出てきていたが、まだ少しキャラの設定がシンプルすぎて私には薄いように感じる。だが今回は新しいキャラも含めてより濃く面白くなって帰ってきたと思える。耳のモデルでありコールガールの彼女やアルコール中毒の同僚。羊を探す男に羊男、羊博士など変人たちが出てくる。みんな一癖も二癖もあるがどこか愛くるしく憎めないキャラである。このような変人たちは村上作品ではよく見かけるが、私が村上作品を読む理由の一つでもある。

最後まで読んでみるとこの作品は一般の冒険小説と同じように読むごとに私はワクワクしていくのである。冒険がどこかに探検に行くという意味でなくホテルや鼠の別荘での生活が中心になってきても、読むワクワクの楽しさはどちらも変わらないとさえ私は思う。また、鼠の別荘でパンや料理を作るところでは読んでいて私はとても食欲がそそられるし、羨ましく見える。これも私にとって村上作品を読んでいてよく思うことだ。羊男が出てくるところでは、最初は状況が理解できないが、徐々に理解でき、そっけない態度さえも最後には好きにさえなっていく。そして読み終わったあとにはすべての謎がわかるのだが、それでも私の中ではこの小説のミステリアスな部分が色褪せずまた彼らや村上作品の独特な世界が恋しくさえにもなる。そして読むたびに内容は大体わかるがいつも新しい気持ちで読めるのも、村上作品を読んでいて私がよく思うことだ。

おわりに私にとって良い小説は何度も読めるものであり、この作品もそのひとつだと最後に伝えたい。

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羊をめぐる冒険 耳が美しい女性は作家としての冒険?

1・考察概要「羊をめぐる冒険」は1981年に発表され「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」の続編であり、この時点では「僕」と「鼠」シリーズの完結編である、と言うような背景やその作品の意味などは大人気作品の宿命として山ほど検討・考察されていると思うので、ここでは「耳が美しい女性」を出すことが、作者にとっても冒険だったのではないか、という仮説を考察する。 2・もう少しだけ背景を書いておく 本書に先行する2作品はどちらもほぼ200ページ、長編と言ってもさっと読み切れる長さだったのに対して本作は一気に倍の400ページ超にアップしている。  1079年のデビュー時点では作者は喫茶店を経営していたが、本作発表の1年前、1980年に作家専業を決断している。ここで何を言いたいか、というと今では超大物作家村上春樹もこの時点ではまだ駆け出しだった、という事だ。そして駆け出しであるがゆえに、「耳が美しい...この感想を読む

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鼠3部作と言われる作品私はこのようにカテゴライズされていることにはあまり意味を感じない(ちなみに“青春3部作”“羊3部作”とも言われる)。そしてこのネーミングはあまりにも即物的にすぎる感じがして、好きではない。これらの作品は、登場人物である鼠がキーとなりストーリーが進むため、こう呼ばれるらしい。「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」そしてこの「羊をめぐる冒険」がその3部作となるのだけど、鼠はすべてに登場している。そしてどこか切ない思春期のような存在だ。この「羊をめぐる冒険」では初めて鼠の生い立ちがわずかなりとも明らかになり、それと同時に羊の存在も大きくフィーチャーされる。この物語の展開の仕方が実に個人的に好みで、この本は本当に何度も読み返している。金持ちの家に生まれ何不自由ない生活を送れるはずの鼠が実家を離れ、放浪していくうちに北海道の恐らくは深い山の別荘で自ら死を選ぶところは、状...この感想を読む

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