映画への愛が感じられる小説
一度観た映画をまた観たくなる
映画のエンドロールで席を立つ人はもったいないと思う。それは、暗闇のなかで文字が上がっていくだけでなにか情報が得られるというわけではないのだけれど、映画は終わっているのだけれど、あれはじんわりとした余韻を楽しむ時間だから。だから、良い映画ほどエンドロールが長ければ良いと思う。いつまでもこの余韻に浸っていたいと感じる。
「フィールド・オブ・ドリームス」はラストシーンのキャッチボールで涙が止まらなかったな、「戦場のピアニスト」は残酷なほどにまざまざと見せつけられる戦争の悲壮さと、ピアノの美しいシーンの対比が素敵だった、「カッコーの巣の上で」は底辺に落ちたように見えた主人公が大胆に殻をやぶるのだけれど、非人道的な状況は改善しないまま終わったので少し後味が悪かった、といままで見た映画を思い出しながら読み進めた。
この本を読んで、一度見た名画をもう一度観直したくなった。
「キネマの神様」に報告するブログ
映画好きな父の映画ブログを始めることからいろんな状況が変わり始めるところは、ファンタジーでみたいで、まさに映画的な展開だなと思った。「キネマの神様」に報告する、という形でブログを書くスタイルが平和的でとても好きだった。映画について感想を書いている人のほとんどは、どうしても上から目線というか偉そうに見えてしまってあまり好きではなかったから。
「神様に捧げる映画の選び方、あたたかく語りかける文章、個性的な比喩、いつも希望を感じさせる結び方。人生を通して映画と付き合ってきた人にしか許されない、深い愛情と思いやりを感じます。」
この作品を書いた原田マハさんも、映画に救われたことのある一人なんだろうと心のなかが温かくなった。
「硫黄島からの手紙」を通じて
わたしの祖父も映画が好きで、古い映画をいろいろ教えてくれた。名作と呼ばれるものはほとんど観ていたのではないかと思う。でも、戦争に関連する映画だけは絶対観なかった。「ゴッド・ファーザー」も「シンドラーのリスト」も「硫黄島からの手紙」も。わたしは戦争を経験してこなかったから、祖父の気持ちを完全に理解することはできないのだけれど、これらの映画を観ると、残酷なシーンがいくつもあって、このシーンが戦争を経験した祖父には耐えられないのだということはよくわかった。映画によって、時代を越えて少し繋がれたように感じた。
この本のなかでも「硫黄島からの手紙」を取り上げていて、いつもケンカばかりしているのに、その映画によって父親のゴウとローズ・バッドのあいだで心のやり取りが行われるところに、感動し胸が熱くなった。
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