テキトーに何回でも読める気楽さ
再読して1.3倍面白く読める豆知識
本作品、同名の映画があったことは知っているが見たことはない、という状態で小説を手にした。読んでから知ったのだが映画用に書き下ろした小説、という位置づけらしい。
そのせいか、映画と小説、どっちが先でも大した違和感はない。
人気小説の映画化、なんてことになると原作との相違点、とか調べたくもなるが、まあそういう背景だし、そもそも気楽な話だから、考察とか考えずにここが良かった、ここはどうかな、と読んだ人、見た人と気楽に話すのが良いと思う。
フィンランド舞台だけど情景描写あんまり無いな、と思ったら・・・
映画試写会の群ようこ氏のコメントによると「フィンランドに一度も行かぬまま書き上げてしまって。私の唯一の汚点です(笑)」だそう・・・
映画見てないけどこの小説好き、という方は見ていただきたいくらい、映画では何気なくではあるがフィンランドの美しい風景も描写されている。小説は情景描写よりもエッセイっぽいリズミカルな会話やお話展開が中心なのでそれはそれで良いけど、今どきはネット等で現地の映像など入手するのは難しい事でもないのでちょっとくらい描写しても良かったかも。
また映画封切り当時の雑誌インタヴューによると(掲載誌ダ・ヴィンチ 2006年3月)タイトル、オールフィンランドロケ、主演女優3人、食堂が舞台、とガチガチに設定は決まっていた、というあまり無いシチュエーションで書いた作品らしい。
その中で「毅然としているけど威張っていなくて、さりげなく地元に溶け込んでいて、やさしい心を持ったきりっとした日本人」を書こうとしたとか。
そもそもエッセイストの要素が強い群ようこ氏だけあって、さりげない文体ながら食べ物がおいしそう、とか大爆笑じゃないけどクスリと笑えるところがいい感じが出ている。
映画用作品なので勝手に再キャスティングしてみた
映画用の小説という事であえて自分なりの画像をキャスティング変更しながら読み直してみた。
主人公サチエはちょっと意外な感じかもしれないが原田知世でどうだろう?既存の映画の小林聡美はどう考えてもはまり役だが、作者が言う日本人像を体現してくれるのではないだろうか。客が来なくても淡々と掃除をしたりする姿はぴったりだと思う。港のそばでかもめに話しかけたり、市場で野菜などを仕入れる姿も似合うだろう。おそらく欧米人から見ると若く見える容姿であるところもジャストミートだ。調理をしたりコーヒーを淹れるのも馴染むだろう。そして、なによりも原田知世が握ったおにぎりを私は食べてみたい。
日本の回想シーンとか、後半で道場に呼ばれるシーンでも道着もきっとキリリと美しく着こなしてくれるに違いない。もちろん道着は白い上半身に黒いハカマの組み合わせだ。部屋で思わず膝行してしまう原田知世というのも考えただけでほほえましい。役者歴も長いしコミカルな役もきっとやりきってくれるだろう。あまり美人すぎないように、メイク、髪型、服装を気をつかわねばならない。ちょっと寝癖がついているくらいがちょうどいいだろう。
次に、ミドリは片桐はいりじゃなくて松下奈緒なイメージで読んだらとてもビジュアルが美しい、と思う。40歳を過ぎている、という設定だが、まあメイクで十分ごまかせる範囲だ。背が高いという設定もあっているし、まじめだけど人生には少々不器用な女性、の感じがすごく馴染む。メニュー用のイラストを書く松下奈緒ってとても絵になるだろう。マッティが無銭飲食するのではないかと疑ったことを悔やんで泣いてしまうシーンが一番の見どころだろう。松下奈緒が真顔の下にちょっとドキドキと気まずさを隠した演技で、「国立ムーミンフィンランド語専門学校」に行く、とでまかせを家族に告げるシーンを考えるとそれだけでも笑えて来る。
こちらもサトミと同様、美人役にならないようなメイクが必要だろう。小説では言及されていないが、ミドリという名にちなんで緑色の服を多く着せよう。緑色の襟のついたシャツと白地にかもめ柄のエプロンとか、彼女のスラリとしたスタイルに合うだろう。おそらくサチエ=原田知世がさらりとして淡い色をイメージした衣装が多くなると思うのでビジュアル的対比が美しいだろう。
マサコは柴田理恵が良いと思う。芸人モードは封印してもらい、あくまでもイケてないオバサンに徹してもらわねばならない。特にキノコでろれつが回らなくなるシーンはさりげなくちょっと間抜けな程度に演じてほしい。他の二人が女優感が強いので異色な雰囲気にならないよう、とにかく大げさな演技をしないように気を付けなければならないが、容姿はぴったりだ。
トンミ君は大変問題だが(外人俳優をあまり知らないので・・・)、ハリーポッターのロン役のルパート・グリントで行ってみよう。ちょっとおバカキャラだが私の中ではこんな顔つきだ。
まあ、隠されたテーマとか、社会の○○を暗喩する、とか難しい事は何もなく、どこを切ってもテキトーに楽しめるのがこの作品のいいところだな。
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