プリズムのあらすじ・作品解説
プリズムは百田尚樹の小説。資産家で家庭教師として働く主人公の女性が、その家に住む不思議な青年と出会い恋に落ちていく様子を描く。 主婦の梅田聡子は家庭教師派遣会社に登録し、東京の世田谷区にある古い洋館で働くこととなる。そこは資産家である岩田家の住居で、聡子が教えるのは小学4年生の修一だった。訪問初日、トイレから修一の部屋に戻ろうとした聡子は玄関ホールを見つめる青年に出会う。会釈する聡子だったが、青年はまるで聡子が存在しないかのようにそのままホールを見つめるのだった。やがてこの青年とは家の中で何度か遭遇するようになり、青年は岩田氏の弟の広志だということを聡子は知る。広志は聡子に会うたびに全く異なる態度を取り、乱暴な言動で物を投げつける時もあれば紳士な時もあり、自分が画家だと名乗ったりもする。やがて広志が奇妙な振舞いをする謎が明らかになるのだが、岩田家で同じを時間を過ごすうちに聡子は少しずつ広志に惹かれてく。
プリズムの評価
プリズムの感想
興味深い題材でした。
解離性同一性障害(多重人格者)の男性のなかに存在する、一人の人格に恋をしてしまう既婚女性の物語です。ヒロインの聡子がステキに読んでいる人間を魅了しないのが、とても現実的になまなましく感じました。本文「・・私達が見ている光は色なんて見えないんだけど、プリズムを通すと屈折率の違いから虹のように様々な色に分かれます。人間の性格も光のようなものかもしれない・・」百田さんさすがです。なるほどです。人間とはということを改めて考えさせられた一冊でした。衝撃的でとても重いテーマを題材にしているのに、重いだけではなく、ストーリーに引き込んでくれたのは恋愛に焦点をあてているからなのでしょう。もっと別の人格が絡んできて振り回されてしまうような展開も読みたかったかなあ?と。
自分の多面性を意識しました。
多重人格というものを通し、人の多面性というものを考えさせる物語になっていました。私自身、子供の頃や若い頃と全く同じではなく、のんびりしているように見えるけど、繊細で傷つきやすいところもあるし…。自分というものは存在してはいるけれど、自分の全てを自覚してはいないかもしれない…。無意識の世界に、まだ私の知らない自分が眠っているのかもしれない…。自分が自分らしくあるために、何らかの機能が働いて、感情や行動をコントロールしているらしい…。誰もが、一言では表現できない複雑な個性を持っている…。この本を読んでいると、だんだん訳がわからなくなってしまいそうです。あまりのめり込みすぎないように注意しながら読みましょう。