母のはなしのあらすじ・作品解説
母のはなしは2011年に集英社から発売された、母親の愛と醜さをリアルに描いた小説である。 母ハルエはふがいない父に頼ることなく身を粉にして懸命に家族のために働く。ハルエは娘が二十歳になったら離婚してやると結婚生活に耐え続け、そんな不仲な両親を見て育ったアカネは結婚に淡い思いを抱くことなく成長し、独身のまま文章を書く仕事について売れっ子の作家として活躍するようになると、母ハルエは娘に経済力がある事に味を占めて娘にたかり、金銭だけではなく精神的にも依存していくようになる。 そんなどこにでもある親子の暗い部分を曝け出し、読者に母と娘とは何か?親の愛情とは何なのかを考えさせる物語となっている。 作者の群ようこは軽快な文章と読みやすさで女性から特に人気の作家だが、群ようこ自身も売れない画家をする父と家族を一人で支える母の元で育ち、不仲な両親を見て育ったからか、本作品内にも群ようこ自信の事ではとも捕らえられる描写が要所要所に折り混ぜてある。
母のはなしの評価
母のはなしの感想
著者の母の話。小説風に。
読んでいるうちに、前に読んだ、「あたしが帰る家」の、家庭に出てくる、お母さんの立場の話だという事に気付きました。という事は、このあかねという娘は、著者の事で、母であるハルエは、著者の母を指すのですね。その他にも、今まで読んだエッセイの母の事を書いた部分を小説化した感じで、既読感がすごかったです。確かにネタとしては面白いけれど、こうも重なると、どうかなあ…と思いました。少女だったハルエが、ろくでもない男である、絵描きのタケシの妻となり、あかねとヒロシを生み、育てるまではまだ良かったが、仕事で成功したあかねに猛烈に金銭をたかって生きていく様は、あまりにも自分勝手で、自己中心的、で驚きました。それを許すあかねにもむかつく位でした。「自分はいつもすべてよし」というハルエの性格が、最後に、多少の美点に見えるように描いてあって、少し救いがあったので、良かったです。