面白さを伝える技術
言わずと知れた福山雅治主演だったドラマ・ガリレオの原作。
ドラマを見て興味を覚えて本を購入した口だが、読めば読むほど東野圭吾の文章力の高さに脱帽する。
この本はいくつかの話が集まった短編集だが、話によって書き方が変わる。一般人視点から始まったり、犯人視点から始まったり、一般人視点かと思いきやそれが犯人だったりと、実に巧妙な文章で書かれている。トリックの方は科学的なものばかりで、はっきり言ってその手の学はないのでどういう意味かちんぷんかんだが、読んでいると何となく「なるほどねぇ」と納得してしまう。普通、科学的な立証というのは目で実際に見たりしなければ分かり難いのだが、東野圭吾の文章は文字だけでも何となく浮かぶからだ。まさに彼による文字の魔法である。
普段はライトノベル系を多く読むので、こういった本をたまに読むと「文章の難しさ」と「魅力」を強く感じる。絵も映像もなく、文字の羅列しかないというのに脳裏にイメージを浮かべさせ、映像のように動かし、読む者がそこにいるかのような錯覚さえも与える。
小説は内容の面白さも当然必要だが、読者に「すらすらと読ませる・思わず読みたくなる」文章力も必要なのだと東野圭吾の小説を読む度に思う。
この本は科学的な観点がある理系推理小説なだけでなく、東野圭吾の小説家としての技術も詰まった一冊と言ってもいいと思っている。
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