主人公に会いたくなる1冊
私は小説を読んでいるとだいたいその物語の主人公のになった気持ちになりますが、
この小説は違いました。
主人公である「定」に会いたくなる小説でした。
人の肉を食べたことのある定
父親が死んだ時も、父の肉を食べることが当たり前だと思い咀嚼した定
身体中に刺青を入れ自分の存在を安心する定
乳母にだけ甘える25歳の定
私は彼女の
人に対して丁寧な部分と、反対に自分に対しては雑な部分が好きでした。
お風呂に入らなくても平気だし、腕の産毛を剃らないとか化粧をしないとか。
「ご飯ちゃんと食べてる?」
「うん」
「温めて食べてる?」
「…うん」
「食べてないんだね」
というテーとのやり取りもすごく好きでした。
でもその反面編集者である定は、担当している作家に対して
真正面から向き合い、考えて行動する。
それが周りにどう思われても関係ない。馬鹿正直なんですね。
私にはそんな付き合い方は出来ない。
でもだからこそ「定」は少し変わった作家でも、感謝される。
きっと感謝されるためにやってはいないのだと思うけど、
その真正面さが、きっと一般的に考えたらおかしな行為が
周りの人に評価されてて私は嬉しい気持ちになりました。
そんな「定」に一目惚れをした盲目のイタリア人の血が混じったハーフ
「定」への思いを率直に伝える彼もまた馬鹿正直で大好きです。
「僕が見ている、感じているあなたが定さん、僕の全てなんです。」
彼との出会いを通してできた「定」の初めての友達。
プロレスが大好きで、文字と文字の組み合わせを楽しむ悪役プロレスラー
あなた達は書く側ではないけど、あなたのおかげで書けたと感謝した作家
物語を書くことが大好きだった夫を愛し続けた妻
「定」に関わった全ての人が確実に彼女を変えていくし、
そして「定」に変えられる。私もその一人。
私はまた「定」に会いたくなってこの小説を読み返すと思います。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)