純粋過ぎて涙がとまらない
宮沢賢治さんの童話は、弱者や虐げられている人が出てくることがとても多い気がします。たぶん、宮沢賢治さん自身が農民たちと寄り添って暮らそうとしたような優しい人であり、自身体が弱くて世間の役に立てていないという意識が心のどこかにあったからなのでしょう。 この作品の、主役である『よだか』も姿がみにくいという理由で、嫌われ者であり、いじめられています。鷹には、名前に『たか』が入っているのがけしからんと因縁をつけられ、殺すと言われてしまいます。理不尽だと思いつつも、『死ぬしかない』と受け入れる気持ちなるよだかですが、つい狩りをして虫を食べてしまいます。そのことに、『自分は他者の命を奪って生きている』と絶望するような優しく、鋭い感性の持ち主であるよだかは、まるで宮沢賢治さんのようです。 そして、死を決意したよだかが高く高くどこまでも空を昇り、最後は星になるという結末には、つい涙を流してしまいます。理不尽に虐げられている身なのに、生きるためにやむなく他者を傷つけることさえ罪だと感じる不器用さ、そして、それを受け止めてくれる神の存在を示してくれる作者の優しさ。すべてが純粋で、読むたびに涙してしまいます。でも、涙しながら、心が洗われたような気持ちになれます。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)