青の炎のあらすじ・作品解説
青の炎は、1999年10月に角川書店より四六版にて発売された貴志祐介による小説。第21回吉川英治文学新人賞および第13回山本周五郎賞の候補となるなどの評価を得て、2002年10月には同じく角川書店より文庫本にて出版された。2012年11月、電子書籍化されている。 主人公である櫛森秀一は、湘南の名門高校に通う十七歳の少年。母、妹と共に暮らしていたが、母が十年前に離婚した男が突如現れて家に住みつき、三人の平穏な生活を一転させる。警察も、法律家も――大人達は誰も、自分達を守ってはくれない。母と妹を守るため、ただ静かな自分達だけの生活を取り戻すため、完全犯罪による元継父殺害を決意した秀一。大人と少年の狭間で揺れ動く主人公の心の奥に宿る、青い炎のような静かな激情を描いた作品である。 2002年には蜷川幸雄・監督、二宮和也・主演、松浦亜弥・ヒロインによって映画化され(配給会社は東宝)、2003年には新井理恵による同タイトルの漫画化作品が角川書店より出版されている。
青の炎の評価
青の炎の感想
若干軽めのクライムサスペンス
物語への引き込み感の弱さネットスラングで“中二病”というものがある。ネットスラングだけにどうしようもないものも多いのだけど、この“中二病”という言葉は“病”という言葉を使うことによって実にうまく思春期の頃にやりがちな自己愛的、自己満足的な言動を表していると思う。主人公の男の子は高校2年生でありながら冷徹な理性と知性を備え、自宅ガレージを自ら改造した部屋に籠もり日々調べ物をしている。それは母親の元夫を殺すために。こういった元々のストーリーは決して悪くないと思う。でも彼のしゃべり方や、時折差し込まれる英語(はいいのだけど英語である必要が感じられない故の違和感)、篭ったガレージではバーボンをあおり…といった設定がどうしても“中二病”の少年を想像させ、読む気が萎える。この物語への引き込み感の弱さは貴志祐介の本では、特に冒頭部分によく見受けられる(もちろん100%主観だけど)。その読み手の気持ち...この感想を読む
とにかく切ない
貴志さんの作品の中でも、そんなにホラー色が強くなくどちらかというと人間ドラマです。 読んでみたら一気にはまってしまいました。 主人公の少年が母妹を助けるために殺人をおかすのですが、こんなに捕まらないでと願う犯人はいなかったです。 逃げ切ってほしかったし、彼には幸せになってほしかった。 でも、人生は残酷ですね。 お話のようにうまくはいかない。 そのリアル感がまるで自分のことのようで悲しかったです。 最後は、号泣というか静かに泣けます。 彼がしたことは許されることではないけど、それでも「いいんだよ。」って言ってあげたくなっちゃいました。ぜひ一度読んでほしい作品ですね。
少年の心の描写が絶妙
主人公の少年が家族のために第一の殺人を犯し、それを隠すために二回目は同級生を殺す。その二つの殺人は少年が頭を使い、計画を練ったものだったのだけど、確実に警察は少年を追い詰めます。最後は自分から自転車でトラックに突っ込んで自殺したんだろうな、と思わせる文章で終わっています。死ぬまでに同級生との恋愛なども描かれていて切なさが半端ないです。主人公が優しすぎて、純粋すぎて、生きるのに不器用すぎて、胸が苦しくなるくらい本当に切ないです。映画も観ました。世界観は同じなので映画もお薦めです。映画の方が殺人シーンが衝撃的です。終わり方も切ないです。