インストールの感想一覧
綿矢 りさによる小説「インストール」についての感想が7件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
高校生の壁
すべてにおいて価値を見いだす受験勉強に追われる朝子は突然何もかもがどうでもよくなり、部屋のものを片っ端から捨てます。大変な思いをしてまですべてを捨て去り、自分の身分である高校生、受験生という肩書までも捨てようとします。そこから物語は始まります。作者である綿矢りさも、このとき17歳という若さで華々しくデビューを飾ります。それに影響されて、昨年の芥川賞受賞者である羽田圭介先生が感化され、黒冷水でデビューするのですが、それは別の話になるので割愛。高校生の心情を生々しくリアルに表現できるのは、やはりリアルを生きている作者だからこそだと私は思いますが、本人は決して登場人物に自分を反映させるということはしないそうで、登場人物=作者と思われることに戸惑いがある、と大物作家さんとの対談でおっしゃっています。なので、主人公の心情が作者自身感じたリアルな感想ではない、けれど、思ってもいない焦燥感を自分のも...この感想を読む
ネットチャット
最近話題になっている若年芥川賞作家の作品です。確か最年少だったか。舞台となるのは「ネットチャット」といった現代の若者の象徴と言ったようなもので、少し好き嫌いの分かれるものか、どうだろうか。と思って手にとって読んでみるとやはり話題になるだけあって面白い。同作者の「蹴りたい背中」の方も続けて読んでしまった。好き嫌い。と言ったがそんな事はまったくなかった。若年作家に良く見られるキャラクターを通しての強い自己主張がないことがまず大きい。若年の学生作家がレーゾンデートルを求めて小説を書いて作家になってしまった…タイプではまったく無い。しかしこの小説は女子高生であるからこそ書けるような切り口で思春期の複雑な心の機微を描きます。詩を思わせるようにリズムよく書かれる文章はとても読みやすく自然で身に溶けていくようでした。
漫画を読んでから読みました
漫画を読んで、面白くて、原作が気になり読みました。綿矢さんは、学校生活に馴染めない子の心理描写が上手だなぁと思います。『蹴りたい背中』でも上手いと感じました。学校に行かなくなったら、世界は狭くなっていくんだなぁと感じたり、なかなか考えさせられる一冊です。自分で自分の殻を破るしか方法はない訳で、その過程もなかなか丁寧に描かれていて良いなぁと思いました。少し物足りないような気もしますが、著者が17歳の時の作品ですし、時代がそういう時代だったのかなぁと思います。あっさりした物語が流行っていたような気がします。漫画になったり映画になったりしてまた違った面白さが発見される作品かもしれません。
蹴りたい背中より好き。
「蹴りたい背中」はイマイチでしたが、これはちょっと読み応えありました。この作品も学校からやや孤立した感じの高校生が主人公でしたが、作者が17才の時に執筆したというのを考えると、主人公は作者自身が投影されているのかもしれません。高校3年生の朝子が不登校になり、受験勉強からドロップアウト。ひょんなことから小学生のかずよしと出会い、一緒に風俗チャットのバイトするという風変わりな設定がグッド。何よりも、かずよしがイイ味だしています。普段はフツーの小学生をしているのに、大人顔負けの豊富な知識をもち合わせて、エロ哲学を語ってるのは、ちょっぴり尖った感じでかっこいいです。
す..すか...
上戸彩さん主演の映画を見てから、この作品を手に取って、読みました。映画では、「ちょいエロ」要素があり、特にふすまの中でガキと会話する場面には、なにかワクワクしたものを感じました。この原作の作品は著者のデビューです。率直な感想としては、やはり原作のほうが過激な発言が多いっ!笑しかし、登場人物の女子高生や小学生のガキの成長過程を辿りながら、進んでいくので、違和感はなかったです。でも、「スカトロ」発言にはビビッた。最近の子はこんな言葉まで知っているのかとも思い、子供にはあまり読ませたくない作品でした大人になってから、読んでほしい作品ですね。笑
謎の通信手段
第一の感想は、「この本、ハードカバーだけど、内容は、ライトノベルみたい」だったという事。読みやすいので、最後までサラッと読めるけど、後に感動は残らない、みたいな。物語の途中で、一番疑問に思ったのは、かずよしはコンピュータを、どうやってネットにつないでいたのか?という事。無線LANかな、とも思ったけれど、(既に家庭には別のコンピュータがある設定で)それにしたって、バレバレになっちゃうんじゃないか。(私の知識が無いだけかもしれないけれど)父親か、母親にはばれちゃいますよね…でもそこからばれた訳じゃないみたいだし。女子高生と男子小学生が風俗のチャットをする、という内容の割に、上品に読み切ってしまえるのは、良かったと思う。
不思議な二人組のお話。
綿矢りさのデビュー作。誰しもが思ったことがあると思う「部屋のものを全部捨てたい」それを実行した不登校の主人公。その主人公が捨てたパソコンを小学生のかずよしが欲しいと言って二人の関係は始まります。二人はかずよしに渡したパソコンでエロチャットをしてお金を稼ごうとするところが個人的に面白く、遊びでやっている主人公もついついパンツが濡れて・・・となんだかいやらしいなと当時の私は思いました。結局はかずよしの母親にかずよしの家にでは入りしていることがバレてしましますが。当時読んだ年齢は主人公と同じ年で。なんだか気持ちも分かるなあなんて思いつつ読んでました。小学生の、しかも男子がネカマでエロチャット。その設定がとにかく気に入りました。