夏期限定トロピカルパフェ事件の評価
夏期限定トロピカルパフェ事件の感想
小市民シリーズ
小市民になりたいそんなアホな。誰かに向かってそう言ったわけではなく、読んでいたらついそういう声が出てしまったのだ。こんなセリフを聞かされて「なるほどそれは立派なことだな」と同意を示す人などはまずおるまい。本来この言葉には「侮蔑」のニュアンスがあるのだ。自分をわざわざ貶めるような目標を持つ人間などあるはずはないと、誰もが考える。しかしそれこそが作者・米澤穂信の作戦であったことに、やがて気づかされる。小市民って?目薬をさすとき無意識に口を開けてしまう、おまわりさんとすれ違うと意味もなく緊張する、靴を履いたまま膝で歩いて忘れ物取りに行く。それが小市民だと言った(歌った)のは嘉門達夫である。もちろんこれはネタである。もう少しリアルな定義をすると、小市民とは平凡であることを信条とし、皆と同じことをちょっとだけ早くできると得意がる。世間体が大切で自分は中流だと信じて疑わない。出るほどに打たれるとい...この感想を読む
小市民の夏休みの様子が描かれています
小市民シリーズの2作目です。前作を読んでいること前提の作りとなっています。小鳩くんと小佐内さんは相変わらず小市民を目指しています。小市民を目指すといっても自分たちの心まで小市民となることを目指しているのか、それとも学校関係等のあくまでうわべだけの印象を小市民として見せることを目指しているのか、前作は二人の関係、性格をいちごタルトと自転車泥棒のたくらみと一緒に明らかにしましたが今回は小市民を目指すとは?ということに触れている作品だと思います。仮に自分たちの心まですっかり小市民となることを望んでいるなら、「小市民を目指す」と思っているうちは永遠に不可能なのでは?読者が前作から感じていたのではないのか、という疑問に二人もぶちあたります。そして二人の出した結論は「一緒にいても仕方ないから関係を解消しよう」恋人でも友人でもない互恵関係の二人、あっさり関係を解消してしまいます。伏線が回収されても謎が...この感想を読む
夏がやってきた
小市民シリーズの第二作目。小鳩くんと小佐内さんにも夏が訪れます。個人的には春期よりもこちらの方が随所で盛り上がりがあって好きです。なんといっても物語は夏。夏らしいキラキラしたことがいっぱい……と思いきや、そう素直にいかないのが小市民たちの生活なのです。今回も美味しそうなスイーツがたくさん出てきて、読んでいてお腹が空いてきます。特に、短編としての評価も高い、「シャルロットだけは僕のもの」は、非常に面白い作品で、作者の描写も手伝って、物語に出てきたシャルロットを食べてみたくなりました。普通とはちょっと違う、真夏の青春を楽しんでみてください。