折れた竜骨世界の歴史小話
折れた竜骨と歴史米澤穂信という作家は、概して現代の話を書く作家であり、この折れた竜骨という歴史を題材に扱った作品は異端に当たります。元々は全くの異世界を舞台にしたハイ・ファンタジーだった代物を改変して作ったのが本作となります。米澤穂信がこの特異な作品を書くに至ったのは、新境地の開拓や編集の薦めなどがあるでしょうが、一度は歴史ものをやってみたいという純粋な考えも少なからずあったのではと私は推測します。彼が歴史好きである事は明らかで、かつてはタクティクスオウガという中世ヨーロッパ色の濃いゲームについて濃い対談をした事もあるほどです。歴史とは即ち無数の人間達の生の集合体であり、有象無象達の様々な動きによって形作られる複雑怪奇な代物です。昨今(2017年現在)話題を集める応仁の乱の概説書を実際に読んだならばおわかり頂けるでしょう。折れた竜骨という作品は、表層的にはヨーロッパのとある小島で起こったコ...この感想を読む
5.05.0
PICKUP