重力ピエロの感想一覧
伊坂 幸太郎による小説「重力ピエロ」についての感想が11件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
ヘビーな伊坂小説。
まず物語の設定が重い。「私」の弟である「春」は母親が強姦されたときに身ごもったときの子供であり…そのほかにも物語に出てくる一人ひとりに逃れられない悩みがあり…といった調子で中盤に入るまでは物語が進みます。しかしこれが伊坂氏らしさというのかその設定の割りにその話ほど重くは感じないのだ。あくまで割りに、だが。理由として伊坂節とも言うのか軽やかというのかキザといいうのか、そういった台詞回しや場面展開によるものかと思います。しかしこれはミステリーではありません、かといって家族愛というには感情移入しにくい設定のうえキャラ作りである。強いて言うならばこの物語にある様々な犯罪の起こりうる世の中に対するアンチテーゼを解いていくためのものなのだろうか。もしそうなのだとするならば、そのようなテーマをこのような軽やかなテンポで美しく書かれている小説としては良い評価をされてもいいと思います。もしかしたらそうい...この感想を読む
重々しいが面白い
兄と弟、父と母。一見普通の家族だが弟は母が暴行されてできた子であり、彼らは辛い闇を抱えていた。大人になった兄弟が主人公。兄弟の周りで起こる連続放火事件・壁の落書き(グラフティアートというらしい)・遺伝子配列、これらが繋がっていくにつれて真相が明らかになる。終始、重いものが離れない。訳ありで産まれた弟が普通であるようで普通でない。その描写が絶妙でリアルで上手い。事件の割にはゆったりした空気が流れている雰囲気だが、根底にあるドロドロ感が時々顔を見せる。犯人は初期段階で分かってしまったが、謎解きの過程は純粋に面白い。最後の父と兄弟が話す場面が温かく、物語の重々しさを少しだけ軽くしている。
重い
話題だったので、映画を先に見ました。一言で感想を言うと、「重い...]です。ボクにとっては内容が好きではなく、映画と小説を見終わった後に心が重かったです。しかし、映画で心が重くなったのに、なぜ小説まで読んだのか。それは「やみつきになる」重さだったからです。話題になるだけあります!家族の絆も多々書かれていましたが、殺人を美化しちゃダメかなーと、面白いを抜きにして思います。それでも、考えさせられるセリフや、心にグッとくるセリフが多いことはプラスポイントです。特にお父さんのキャラクターがいい味を出していました。ただ、重い。それだけです。
読みやすい文章
この本は伊坂幸太郎の傑作です。該当作品は展開がおもしろくてどんどん読み進めてしまうし、登場人物の人柄がみんなどこか好感がもてるし、大好きです。文章は読みやすい言葉で進めていましたので早く読めると思ってましたが、テーマが深いので、読み手の喜怒哀楽で、進まない。悔しかったり、尊敬したり、何で?と思ったり、登場人物と推理したりと忙しい。あっさりしてると思ったらこってりした内容でした。主人公はレイプされてできた子とその兄。ほら、深いやろ。結果から言って、とってもおもしろかったです。人々の感情がよく伝わってくるし、作者のユーモアある文章も好きです。読み終わってスッキリ感があり、また考えさせられる作品でした。
伊坂幸太郎らしいといえば
伊坂幸太郎らしい作品だと思いました。人と人との暖かい関係と、ちょっとした謎解きと、思いもよらなかったつながりに、希望のあるエンディング。いいけど、ちょっとご都合主義な感が否めません。読みやすいのでサクサク読めていいのですが、ちょっと物足りない感じはします。映画も観たのでそのイメージが強いのか、とても透明感のある映像が思い浮かびますが、内容は意外とヘビーです。ヘビーな内容をヘビーな文章で書いても重いだけでしょうが、軽すぎてアンバランスではあると思います。若い人やライトな読書好き層向けなんだろうな。冒頭の「春が二階から落ちてきた」もちょっと狙いすぎじゃないかな・・・
すごい内容
この作品はハッキリと好き嫌いが分かれるだろう。なんせ内容があまりにも重すぎるからだ。作品の中心は、兄の泉水と弟の春の異父兄弟なのだが、特に次男の設定が重い。次男の春は、実は、一緒に暮らしている父親が親ではなくなんと、レイプ犯が父親なのだ。しかもその憎きレイプ犯と、兄、泉水は後々、接触してしまう。だが、私が一番驚いたのは、一緒に暮らしている父親は、レイプ犯の子を身ごもってしまった妻に対し生んでくれと言った事だった。この考え方は人によって真向に分かれるなと思った。レイプとは絶対あってほしくない!改めてそう思わせてくれる小説だ。あえて女性に見て頂いて、自分で自分の身を守るという考えを根強くもって頂きたいと願う。
春が、二階から落ちてきた
映画も観たけど、映画はだめだー。この作品の雰囲気を活かしきれていなかったように思う。この小説も、伊坂幸太郎作品によく見られる、緻密なパズルのような逸品。描かれているのは家族の愛。主人公は4人家族の長男で、弟とは半分しか血がつながっておらず、母親は既に亡くなっており、父はガンと闘っている。出て来る人出て来る人が格好良いというか。主人公は主人公なりの葛藤を、弟は弟なりの葛藤を抱えているわけだけれど、確かに二人は兄弟なのだ。その事実に強く心を揺さぶられる。ただ、最後に彼が彼を……してしまうので、それはどうなんだろう、というのがどうしても気になってしまうんだよなぁ。という訳で★マイナス1。
家族って血の繋がりじゃないんだな。
レイプ・連続放火・複雑な生い立ちの家族など重いテーマを扱ってますが、全体的にテンポが良いので、読みやすいです。謎もたいして深くないので、ミステリーというよりも家族愛の小説といったところでしょうか。読み終えて、家族って血の繋がりじゃないんだな、と感じました。ただし、本文中は気取った感じの引用も多く辟易したりもしましたが、遺伝子の専門知識など、今まで知らない興味深いことも書かれていたので、雑学としても楽しめました。何となく村上春樹っぽい文体ですが、それよりも知識を詰め込み過ぎでギュウギュウな印象です。もうちょっと余裕があった方がいいかもしれません。この作品は、世間では賛否両論で評価が分かれますが、私はまあまあ好きです。ちょっと現実離れした展開・矛盾など突っ込みどころも多々ありましたが、フィクションだからいいんじゃないでしょうか。あまり深く考えずに、雰囲気で読むのをおすすめします。この感想を読む
不思議な兄弟の、不思議な体験談
全体的に、想像し辛い印象の作品でした。でも、冒頭の言葉はどこか印象に残って。伊坂ワールドとされる世界に入っていくのは、容易かったです。街で起こる連続事件と、お互いまったく違う角度からこの事件に係っていく、とある複雑な兄弟。この二人も、また掴み辛い人間で。それも、作品のぼやっとした印象に繋がっているかもしれない。お話のネタバラシが理系寄りなところも、個人的には「よく分からん」と思ってしまった起因かなと思います。が、ネタバラシを踏まえた上で読み返すと、所見でフワフワしていた所が分かっているからか少し余裕を持って、細部にわたって読み込めて実はなんて切ないお話なんだろうかと、まったく違う印象に驚きました。何年経って読み返しても、同じ気持ちで居られる。読み返す度に、少しずつ分かっていく背景。不思議なお話です。
重いテーマだが読みやすい
仙台作家、伊坂さんの作品です。映画化もされた話題作ですね。僕はこの作品の一行目からとても大好きです。「春が二階から落ちてきた」なんだろう?と思いますよね。こういう素敵な文章が伊坂さんの持ち味なのだと思います。さて、中身ですが、非常に重いテーマ(レイプ)を扱って家族愛を描いた物語です。心にずっしり来ますが、どこか登場人物には救いがあります。連続放火事件を追っていくのですが、そのハラハラドキドキも楽しめましたし、とても満足できる内容でした。しかし、ラストは評価を二分すると思いました。僕は主要登場人物の方に感情移入できていたし、綺麗ごとで終わらない感じが好きだったので問題ありませんでしたが。
あまり好きじゃないほうの伊坂作品
主人公の私には血のつながりがない弟がいる。弟は母親がレイプされてできた子供。というなんとも暗い設定の物語ですが、内容は軽めで読みやすい。というか、なんだか、ぼやっとした印象でした。連続放火事件から家族のの絆を描いていますが、あんまり感情移入は出来ない感じ。なんだか、中にところどころ雑学があったりして、すんなり物語に入れてくれない。こじつけ感が多い作品でした。なかなか読み進めるのが辛く、ゆっくり時間をかけて読みましたが、2回目は読もうと思いません。好き嫌いが分かれる作品だと思います。というか、私の中で伊坂 幸太郎の作品の好き嫌いが結構あるのでそのせいかも。