我らが隣人の犯罪の評価
我らが隣人の犯罪の感想
この頃から宮部らしさが出ている
タイトルからも推測できますが、江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」に影響を受けてそのモチーフに近いものが使ってあります。しかし他の舞台設定やアイデアなどは全く宮部本人の独自のものですし、作風もこの頃には出来上がってると行ってもいい気がします。平易で読みやすい文章に、キャラクターに注がれる視点と物語のある種の穏健さ。他のミステリにあるような胸が悪くなるほどの描写は陰湿で後味の悪いといったものはありません。そのあたり犯罪を扱っていてもどこかまともな感覚があると思います。他の作品も大トリックや壮大な物語というよりは小品に近い感じのものがありますが、短いストーリで宮部節を味わいたいならおすすめです。
とにかく読みやすい!
現代ミステリーの女王、宮部みゆきの短篇小説。(表題作を含む5つの物語あり。)主人公の誠は、一家四人で新しいタウンハウスに引っ越してきた。念願の家が手に入ったという事で、家族は、大喜びだったが、住みはじめて問題が出てきた。誠のお隣に住んでいる美沙子さんの飼っている愛犬ミリーの泣き声だ。彼女は、ミリーを散歩に連れ出したことがなく、家に押し込めたままだ。ストレスと運動不足から解放してあげるべく、誠、病弱な妹の智子、誠の叔父の3人である方法を思いつく。物語の結末は、「なんだ、そういう事!」と思わず笑ってしまう。宮部信者おすすめの1冊。
軽いタッチで読みやすいです
私はとても推理小説が好きなんですが、一時本を読む時間がほとんど取れない時期がありました。途中まで読んで、間があいてしまうと続きが読みづらいのが推理小説、だと思っているのですが、そんな時にこの本に出会いました。1つ1つの話は短く、軽いタッチで短時間で読み切ることができました。しかし一方でその内容はさすが推理小説の女王(勝手にそう思っています)と言いたくなるくらいに、しっかりずっしりしていました。特に短編にも関わらず、しっかりと背景がイメージでき、すんなりと物語に入り込んでいける「作りこまれた」部分が本当に素晴らしいと私は感じました。仕事、子育てなど忙しくてゆっくり読書、というわけにいかないひとにこそ、お勧めです。