食べ物をおいしそうに食べる人間は、よろしいですね
松本春綱
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おつきあいしてからの描写の少なさについて『センセイと再会してから、二年。センセイ言うところの「正式なおつきあい」を始めてからは、三年。』この描写に驚いたのは、私だけだろうか。『センセイ言うところの「正式なおつきあい」』が描かれているのは「公園で」の章。最後から2番目の章だ。文庫本のページ数で計算すると、再会してからの2年に230ページ費やしたのに対し、おつきあいしてからの3年には約30ページしか費やしていない。おつきあいしてからのエピソード少なすぎじゃない?しかも、次の文。「あのころから、まだ少ししかたっていないのに。」とある。ということは、今までの話はセンセイが亡くなってからしているツキコさんの回想話?えー、じゃあ尚更付き合ってた頃の幸せエピソードを思い出せばよいのに。センセイへの恋心を自覚するまでのエピソードに約100ページ(注:文庫本の場合)使うくらいなら、その半分のページでもい...この感想を読む
センセイとツキコさんの恋愛話。ただし異色の恋愛物。ツキコさんは30代後半、センセイは30歳年上である。歳の離れた二人が居酒屋でまったりと過ごす時間がもどかしくもあり、面白くもある。絶妙な距離感でふんわりとした時間がただただ流れていく。最初に読んだのは10年くらい前だったのだが、当時はこのような恋愛に理解を示せなかった。久々に再読した今は、なんだか共感できる。自分が歳を重ねたせいか、それとも「結婚しない」という選択をする女性が溢れてきた世情によるものか。このような恋愛が増えてくるのかもしれないと感じた。最後は哀しい結末だが、この作品の空気感が壊れないようなまとめ方になっている。読後感が良い。
松本春綱
教え子のツキ子とおでん屋に入る場面。 おいしそうに食べるツキ子を見て、春綱が発した言葉。相手を慈しむ心、センセイの深い愛情がにじみ出ている。