ロック母の評価
ロック母の感想
15年の書き方の変化をたどれる短編集
川端康成賞受賞作「ロック母」を含む、1992~2006年の間に書かれた7つの短編を収めた本です。25歳の時の芥川賞候補作「ゆうべの神様」は、本人は、「拙い」とあとがきで書いてあったけれど、荒削りながらも、才能をうかがわせる作品だと思いました。そこから、だんだんと文章が上手くなっているなあ、というのがなんとなく伝わってきます。書き方の変化がたどれるのが面白い本です。収録されている短編たちは、「家族」「海外旅行の出来事」のどちらかに属する話題なのですが、暗い内容ばかりです…が、不思議と真っ暗、という訳ではなく、どこかに爽快感があったり(ブリッキーヌを食べ続けるとか)おかしみがあったり(ニルヴァーナを爆音で聴くとか)して、それで救われているかな、という感じです。読後感は決していいとは言えないけれど、面白い本だと思いました。