ろまん燈籠の評価
ろまん燈籠の感想
作家の魂
太宰治の作品の中では比較的ライトな短編に当たります。「人間失格」や「走れメロス」のようにえげつない人間洞察や哲学の主張が全面押し出されている作品ではないので一般読者にも読みやすい作品ではないでしょうか。しかし、それでもさすが太宰治というだけあって面白い切り口で物語を織り上げます。変わったロマンちっくな一家の兄弟五人がひとつの物語を連作するといういたってシンプルなストーリーです。個性の強い5人がそれぞれのパーソナリティらしい作品を書いていく課程と内容がシニカルに描かれています。太宰治らしいするどい人間鑑識がとても小気味良く面白いです。もちろん太宰治なので深い思索からの表現ではあるのですが、調度良い濃さで一般向けな作品だと思います。