カフカ『変身』の評価
カフカ『変身』の感想
あまりにも有名な古典の名作
突拍子もない設定にもかかわらず主人公グレーゴル・ザムザが“気がかりな夢から目を覚ますと”自分が巨大な虫になっていることを発見するという有名なこの始まり方は、多くの読者をこの時点で読むか読まないか選別することになるのではないかとおもうくらい、突拍子もない始まり方だ。しかし当の本人はことの大きさを理解しているのかいないのか、時折自分の体の動きや支配人の態度に“面白さ”や“微笑み”をもらしたりしている。この外見の深刻さと本人の意識の違いがこの小説の魅力を際立てているところでもある。グレーゴルがなぜ虫になったのか、その理由や過程などはまったく描写されていない。ただ朝起きたら虫になっていたというところから始まるのだから興味深い。それはまるで「最終兵器彼女」のちせがいきなり冒頭から体中から銃器を突き出した異形をし、どうしてその体になったのか説明が全くないのを思い出させた(もしかしたら高橋しんはここ...この感想を読む
繋縛された者
強烈な初期設定に潜むあるもの冒頭から主人公が虫に「変身」してしまうという稀な設定で非現実的ではあるが、なにか切迫してくる生々しさがこの作品にあるように思われる。この”生々しさ”は、虫になったザムザがサラリーマン的な雇用モデルを原型として構成されたキャラクターであることに起因する。家族を養うために収入を得てゆくためだけの「機械」と化したザムザは人間的であることはいったいどういうことなのかを虫になることによって意味を回収することになるのである。ストーリーが強烈なのはこの点にあり、単純に虫になるだけであったらならデ○ズニー映画によくでてくるような視点(人間的宇宙観と昆虫的宇宙観の差異に基づいた冒険物語)からでも物語的に十分書けたであろう。グロテスクなまでに肉迫してくるしてくるこの、「なんだかわからないけど、誰かに似てる感」が作品の読者への浸透圧を強めるのである。彼の存在がばれないように、ひた...この感想を読む