郊外への評価
郊外への感想
パリのもうひとつの顔。
堀江敏幸のデビュー作。「郊外論」と呼んでいい思索を展開していて、読んでいると、作者と一緒に歩いているような気分になります。パリの郊外を歩き、城壁に沿って、または運河に沿って、そこで出会った人々や、出会ったモノからたどる思考の旅です。特にモノに関しての記述が、自分的にはツボでした。タイプライター、撞球台などについて、じっくりと読ませてくれます。パリの華やかな街区を離れた、もう一つのフランスの顔を、丁寧にさするように書いている本です。著者独特の、長くくねくねしたセンテンスはすでに発揮されていますが、本腰を入れるには至っていないかも。堀江ファンには「若いわねー」と感じられるかもしれません。