カフカは物語は死ねない悪夢
馬鹿の一つ覚え化した「カフカ的不条理」カフカ作品を論じた無数の読み物には必ず、不条理だとか悪夢的だとかいう言葉が殆ど洩れなく付いてくる。今日では猫も杓子も「カフカ的不条理」という一つ覚えを振り回す。それが気の抜けたものであるか、なにかしらの新鮮な考察を含んだものであるかはこの際どうでもいい。ともかく、カフカの死後の半世紀ばかりの間に、ドイツ文学者はもちろん、心理学者も社会学者もよってたかってカフカの輪姦に勤しんでいる。いわゆる「カフカ的不条理」なるものに寸毫も悩まされたこともない善良なディレッタントさえもが、口を開けば「カフカ的不条理」を論ずる。たしかに、彼の作品は「不条理」に満ちている(この場合、「不条理」とは、文字通り道理に合わないということだ)。何のいわれもなく突然訴訟を受けたり、ひたすら断食していたり、朝目覚めると気味の悪い虫になっていたりして、ともかく「現実離れ」した文学の虚...この感想を読む
3.53.5
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