月の影 影の海 上 十二国記の評価
月の影 影の海 上 十二国記の感想
十二国記シリーズのはじまり 異世界に迷い込んだ少女の物語
作家・小野不由美の実力とは『残穢』の映画化になってようやく世間に広く名を知られるようになった小野不由美だが、そもそも小説を好む人々にとって小野不由美は非常に評価の高い作家である。まず第一に、読みやすい文章力。嫌味でも知識自慢でもなく、すらすらと流れるように文章を紡いでいくスタイルが持ち味だ。文章というのは書き手の巧拙によらず、読み手の好き好みが意外なほど分かれるものだが、読まず嫌いを跳ね除ける実力が、小野不由美にはある。描写は丁寧でわかりやすく、どんな世代の生徒にもきちんと対応する教師のような教え方の出来る存在だ。そして第二に、豊富な知識に基づいた世界観構成である。これは『屍鬼』に詳しいだろう。閉鎖的な田舎、というよくある舞台設定を、読者の想像力に依存せずに一から造り上げた。特に冒頭の作中の舞台・外場村の描写は非常に細やかであり、誰もが見たことのある景色を映像として浮かびあがらせ、世界...この感想を読む