壺霊のあらすじ・作品解説
壺霊(これい)は、内田康夫のサスペンスミステリー小説である。この小説作品のあらすじは、京都の老舗骨董店の女将が、代々伝わる高価な壺と共に忽然と姿を消すところから物語が始まる。秋の風情深まる美しい京都を、グルメリポートのためと思い訪れていた浅見光彦は、老舗骨董店の娘の伊丹千寿から壺を手に失踪した母親を探しだしてほしいと懇願される。そこで名探偵と言われる浅見光彦が、情緒あふれる美しい京の都をめぐり謎を解決していく。この作品では、美しい古都を背景に古の壺にまつわる女達の抱える情念と彼女たちの現実の虚ろさともろさを美しくも儚くサスペンス・ミステリーと並行して、主人公で探偵の浅見光彦によって描き出されていく。 この小説作品は、内田康夫のベストセラーである一連の旅情ミステリー、浅見光彦シリーズの一つである。この作品は2007年から2008年に京都新聞で連載され、2014年11月17日にはTBSの月曜ゴールデンにてテレビドラマ化された。
壺霊の評価
壺霊の感想
実在の風景を思い浮かべながら読める作品
作中には実在のお店・寺院が多数。ガイドブック代わりにできる一冊この作品は「浅見光彦シリーズ」の作品であるが、浅見が表向きは京都の四条河原町にある、高島屋のダイニングガーデン京回廊の取材に行くという名目で京都にやってくる。ダイニングガーデン京回廊とは、実際に京都高島屋内にある食事処が集まったフロアであるが、八起庵の親子丼や、つな八の久蔵丼など盛り付けや味の食レポが詳細に書かれているのが興味深い。高島屋以外では、京都では有名なラーメン店天下一品のこってりしたラーメンについてや、幽霊の子育て飴本舗で売っている素朴な味の飴のことも非常に丁寧に書かれており、実際に行って食べてみよう、買ってみようという気持ちになるような作品である。寺院についても、安井金毘羅宮など縁切りで有名な寺院が重要な舞台となっており、実際に足を運んだ人は金毘羅宮の独特の雰囲気を思い出すことができ、行ってない人は一度参拝してみ...この感想を読む
グルメな旅情気分に浸れる
人気の浅見光彦シリーズ。舞台は京都。老舗古美術店の嫁、佳奈が高麗青滋の壼“紫式部”と共に行方不明となった。グルメ記事の取材や兄・陽一郎からの頼みもあり、光彦は京都に向かう。そこで出会った依頼主は、佳奈の娘であり、京都の芸大で陶芸を学ぶ千寿だった。手掛かりは縁切り神社・安井金比羅宮の形代。光彦は千寿と共に佳奈の行方を追う。そして殺人事件が……。読みやすい文体とベタな設定が好みで、このシリーズは以前から追いかけている。毎回グルメな旅情気分に浸れるのも良。今回は自分の母校が舞台なので特に感情移入できた。大学傍にある天下一品本店の描写に感激。懐かしい気持ちになれた。