長期取材の元に制作された現実味があるフィクション
一度読んだ作品を読み返したくなる「不等辺三角形」に限ったことではないのだが、内田氏の作品は他の作品との登場人物や出来事がリンクしていることが多く、一度読み終わった作品でもまたそのリンクにぶち当たると読み返したくなる、という特徴がある。この作品に登場する、内田作品の中でも指折りの富豪、名古屋の正岡家と、正岡家当主の妹である錦恵は、その後「遺譜 浅見光彦最後の事件」でも謎解き取材の有力な協力者となる。正岡家の事件は非常に奇妙な、一見パズルを解くような楽しさと同時に、あまりの富豪ぶりにに忘れられない人も多いと思うが、浅見が副業としてやってきた探偵業で培った人脈が後々役に立つことを考えると、日々の人との出会いが、どこでどう自分の身を助けることになるか、学ぶところも大きい。登場人物の使いまわし手法は、作家にとっても他作品への興味を読者に植え付けることができるし、読者にとってもあの作品の子の人がこ...この感想を読む
4.74.7
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