ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂの評価
ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂの感想
型破りで挑戦的ではあるがどこまでもまっとうな青春小説
かけがえのない人を失った二人は、ヤツと闘うことが「できた」。優しい厭世観としてのチェーンソー男かけがえのない人を失うという共通項を持つ山本 陽介と雪崎 絵理。二人は謎のチェーンソー男と命がけの闘いをしています。理不尽なほどに危険な状況ですが、しかし、山本たちは「彼」と闘っていられるという「幸運」の只中にいることもまた、事実です。何せ、チェーンソーを持った意思疎通のできそうにない大男が相手なわけです。どれほど気分が沈んでいようと刃の行き先に全神経を尖らせねばならなくなりますし、事情を知った山本は絵理と離れることはできなくなり、絵理もまた、山本を頼らざるを得なくなっていくわけです。束の間ひどい現実を忘れ、独自のルールが定められた状況に没頭する、となると、ゲームにのめり込むような雰囲気もありますが、それは山本にとっても絵理にとっても必要不可欠な時間だったのでしょう。「彼」はその場と時間を提供...この感想を読む
敵とは、人はどう生きるか
この世代で有名な作家で、乙一、西尾維新、佐藤友哉等がいますが、僕の中で小説の概念を大きく変えたのが滝本竜彦の「ネガティブハッピーチェンソーエッヂ」でした。この作品において、焦点が当てられているのは、『敵という概念』ということにあります。『敵』ってなんだ?彼らはほんとに排除すべき存在なのか?その疑問について書かれています。敵とは『逆デウス・エクス・マキナ』ここで書かれる「敵」は、ものすごく象徴的で現実にはいない存在です。正体はわからないしいつも武器は違うし強さもまちまち。まるで一貫性が無いが、とにかく少女は毎日戦っています。敵の正体は?目的は…?と言うのが気になるところですが、この作品における焦点は『敵』という概念そのものに当てられます。ここで、通常のドラマやマンガでの展開を考えてみましょう。通常の作品では、登場人物の関係や事態が拗れると、事件が起きたり敵が現れます。そして、それらに向き合う...この感想を読む