峠の評価
峠についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が3件掲載中です。
各項目の評価分布
峠の感想
観念的現実主義者の悲劇
非官軍・非幕府軍の英傑・河合継之助幕末維新の英傑を挙げる場合、高杉晋作、坂本竜馬、大久保利通といった新政府側や土方歳三、勝海舟といった幕府側の人間の名前はよく挙がる。それに対し、知名度はやや下がるものの、その視野の広さにおいては何人が比肩しえたかという人物が越後長岡藩の河合継之助である。本作「峠」は藩の中堅官吏の子として生まれた継之助が、陽明学と出会いその観念性を青春の放浪の中で育み、同時に自身の中に流れるリアリズムをも鍛え上げながら、藩の執政へと上り詰める様が描かれている。彼の生きた時代は幕末の混迷期であり、藩の財政を危機から救った彼も否応なく新政府軍と幕府との争いに巻き込まれることとなる。そして北越戦争の中心人物として賊軍の汚名を被ることとなった。司馬遼太郎にとっての陽明学司馬遼太郎の作品に「陽明学」という言葉はよく出てくる。「知行合一(知は行のもとであり、行は知の発現である)」と...この感想を読む