四つの署名の感想一覧
コナン・ドイルによる小説「四つの署名」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
ホームズ大丈夫ですか
コナン・ドイルはホームズをどうしようとしたのかわかりませんが、冒頭はホームズ完全に廃人になっています。ワトソンも力関係的に強くは言えないっぽいですね。良い時も悪い時も一緒、それが夫婦・・・いやこのコンビの結束の強さでしょうか。とにかくここから後半の名推理や手に汗握る大胆なアクションへとつながるとはとても思えないほどホームズは穏やかに荒れています。しかし、依頼者の語る奇妙な話にもりもり元気を取り戻すげんきんなところが結構可愛いです。印象的なのはボートのシーンです。このシーンはアクション映画のようで映像が浮かんでくるような名シーンだと思います。
裏に潜む真実と息もつかせぬ冒険
うら若き女性メアリーのもとに、なぜか毎年届いてくる真珠。差出人が不明でもあるし、真珠を送られるような覚えもない。不審に思ってホームズとワトソンの所に相談に訪れたことから物語は始まります。正体不明の相手はメアリーとの面会を求めてきており、不安に思って二人の力添えを仰ぎます。面会相手との会談で明らかになったのは次のようなことでした。メアリーの失踪した父はかつてインドに勤務しており、現地で発見された宝をめぐる因縁があり、その争奪戦をめぐって様々な騙し合い、殺人まで行われていた。メアリーが財宝を受け継ぐ権利があるという話になるところが、インドでその財宝に関係する四人の当事者と戦いになる。ここがタイトルの四つの署名とつながり、謎を解決するさなかにホームズ的な冒険物語へと進んでいくのが醍醐味です。何よりこの長編はワトソン博士の身の上に大きな変化が起きるのがファンにとっては見逃せません。この感想を読む
ホームズシリーズ二作目の長編
『緋色の研究』に続くホームズ作品の二作目の長編である。そのつながりで、今回久しぶりに読み返したのだが、やはりホームズ作品は短編集の方が個人的には好みである。本作は、当時イギリスの植民地だったインドにおける反乱を背景にした財宝を巡る欲望が引き起こす殺人事件である。そういう歴史背景があるのは、長編ならではだが、クライマックスで長い説明があるのが、やや冗長に感じなくもない。また、事件の依頼人とワトスンの恋愛話も、特に必要性を感じない。作者は、シリーズ化にあまり乗り気ではなかったのだろうか?と勘ぐってしまう。ホームズ作品は決して嫌いではないが、お薦めは短編集である。
やはり古典は安定していますね
シャーロック・ホームズのシリーズは、小学生の頃に子ども向けの訳本にはまっていらい、大好きなシリーズの1つです。一番の魅力は、なんといっても、ホームズとワトソンの個性的なキャラクターを軽妙なやりとり。その後、探偵と助手の典型例となったのも納得の魅力だと思います。『四つの署名』は初期の長編ですが、個人的には短編集の方がおもしろいと感じています。ホームズとワトソンの個性作りに、まだどことなく作者の手探り感がにじみ出ている気がします。また、比較的古い時代の訳本なので、言葉づかいがやや古めかしいのは否定できません。その辺りが、文章力の減点要因です。インドの内乱に乗じた裏切りと復讐の物語ですが、『緋色の研究』に比べて、人間の欲望がむき出しなので、どうしても殺伐としたものを感じるのが、ストーリーの減点要因です。ついでに、とってつけたようなワトソンの恋愛感情も、別になくていいかなと思ったり。ホームズ・...この感想を読む