曰くつきの病院、静かな緊張感
「チーム・バチスタ」シリーズとは違うものの、一連の「桜宮サーガ」のうちの一作。 読む順序としては「ジェネラル・ルージュ」の後になるだろうか。 今回は田口の出番はほぼなく、物語の語り手は天馬大吉というなんともラッキーそうな名前を持つ(でも結構アンラッキー)医大生。 記者であり幼馴染の別宮葉子が、彼に看護ボランティアとしての碧翠院桜宮病院への潜入を依頼する。 碧翠院桜宮病院。ここには通常の病院だけでなく、ホスピスや寺院まで併設されている、終末医療の最先端を行く病院であった。 同時に、曰く付きの病院でもあった。 この物語は、生とは切り離せない「死」というものがテーマにあり、海堂氏ならではの読みやすさを保ちながらも、独特の重さがある。 突然の身内の死、自ら願う死、病の結果訪れてしまう死…同じはずなのに、そこに至るまでの差が、死というものの意味に差をもたらす。 ミステリーの体裁を崩すことなく、様々な要素が散りばめられた、文章による螺鈿細工といったところだろうか。
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