悲しすぎる物語
身近にいそうな登場人物たちこの物語の特徴は、登場人物がイギリスの村にいかにもいそうなリアリティのある描写がされていることです。特に、女性陣の描き方にものすごい洞察があります。この点は、名探偵ホームズのように、証拠物を集めたり虫眼鏡で調べたりするのとも、ポワロのように誰もが気づかない小さな遺留物や態度にふと違和感を感じそこから灰色の脳細胞で論理的に組み上げるのとも全く違っていて、物語は主におばちゃん達の会話や噂話によって進みます。マープルはただ穏やかに聞いているだけ。それなのに登場人物たちの話を総合していくと、そこに憎しみの生まれ得る不穏な人間関係が浮かび上がってきて、のどかな村に見えていたのに裏側にはうずまく感情が交錯していることがあぶり出されます。特に今回においては、親切や善意や無邪気さも、押し売りすれば耐えがたい苦痛を他人に与えることもある、と象徴されるような不愉快なおばちゃん達が...この感想を読む
3.53.5
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