天使の魅力
美しい描写村山由佳の魅力の1つとして、なんとも美しい自然風景の描写がある。天使の柩では満開の桜の季節から始まる。たとえ桜の季節ではない夏や冬に読んだとしても、パッと桜の風景が思い浮かぶのではないだろうか。登場人物の暗く殺伐としたとしたエピソードとは裏腹に、季節だけは儚くも美しく流れていく。それになぜだか心地良い違和感がある。桜が示すのは季節だけではない。過去に失った女性を重ね合わせるものでもある。村山由佳が描く天使シリーズの完結作として、ひとつの情景から様々なものが連想され、物語の幅を広げていく。ひとつひとつの描写には全て意味があるのだと感じさせてくれ、それがさらに感動を誘うのである。さらに美しい描写は自然ばかりではない。人物の姿や表情や仕草などの全てが、リアルに伝わってくる描写が多い。春妃の美しい佇まいが特に印象的である。そのような描写が小説を輝かせるエッセンスとなり、魅力的な作品に...この感想を読む
4.54.5
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