大切な人がおらん人間はなんでもできると思い込む。
石橋佳男
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大ヒット小説を、高い本気度で映画化!いわゆるノワールもの=人間の心の闇を扱う作品かと思って視聴した。最初に見た時から、とにかくヒロインの美しさに尽きる作品だとは思ったが、殺人を犯した男性の挙動には納得のいかない部分もあり、何度か見直した。 3回目のリピートで本作は特定の人間の闇を語っている訳ではなく、全ての人間の闇を語っているのだ、という考えに達した時、いろいろな演出が腑に落ちた。 この手の作品は視聴後、腹の中に異様な不快感を残すか、あるいは感動や激情に走るか、どちらかに振れた作品が多いように思うが、本作は安易な解決に走らなかった点が心に刺さる。「ひとつの殺人事件。引き裂かれた家族。誰が本当の“悪人”なのか?」このキャッチコピー李相日(り そうじつ)が明瞭にこの作品を表しているように思う。巻き込む者、巻き込まれる者たちが細かく描かれており、視聴後に見た人同士でこのコピーについて語らずに...この感想を読む
妻夫木聡の新たな発見吉田修一原作のこの映画。小説がとても面白かったので、映画になってないのかなと探してみたらあったので、原作以外のなんの先入観もなく観た。主人公が妻夫木君というのがどうだろう、できるのかなと思ったけど(彼が悪いというのじゃなく、あまりにも善人顔というか。小説を読んでいるときは、この主人公を綾野剛とかそういった感じで想像していたので。)これは結構はまっていて、意外な発見だった。原作の、顔立ちは悪くないのに地方都市独特の泥臭さがまとわりついてまったくイケてない感を、よく出していたと思う。金髪の似合ってない感じもよかった。しゃべり方も下手な上、常にボソボソとしゃべり、猫背で。ストーリーが進んでいくにつれ、無理だと思っていた役柄がしっくりときていた。彼のイメージは「ブラックジャックによろしく」とか「感染列島」とかそういった爽やかで勇気があってといった感じだったけど、この映画で彼...この感想を読む
まず感じたことは、タイトルが「悪人」であるにも関わらず、「愛」をテーマに創られた作品なのだろうということでした。主人公の祐一は田舎で働く無口な青年ですが、彼の境遇がものすごく壮絶。冒頭からいきなり付き合っている彼女、佳乃にセックスが上手な金づる扱いされる上に、彼女の浮気相手である増尾の目の前でフラれてしまいます。この後、主人公は佳乃を殺害してしまい、警察から逃げるという流れになります。また、彼の実母は、彼のことをまるで疫病神のように言っているのです。作品内では主人公が佳乃を殺害した後の言動として描写されているのですが、それでもあまり良いとは言えない親のようです。そんな彼の作品中での言動ですが、冒頭や回想シーンでの佳乃とのやり取りや、昔知り合った女性、光代とのセックスの前後の態度から、あまり愛された経験がないことがうかがえます。人並みに愛されていれば、上述のようなひどい境遇に置かれること...この感想を読む
石橋佳男
娘を殺された父親が、娘が殺される直前まで一緒にいた男に対して言った言葉。