暗黒神話のあらすじ・作品解説
暗黒神話は、週刊少年ジャンプにおいて1976年20号から25号の間掲載されたSFと神話を主題にした作品である。連載期間が全6話と比較的短く単行本も全1巻ながら、複雑で難解な設定や実在の神話を題材にしたストーリー展開から、漫画と言うカテゴリー以外でも、純粋なSF作品としても高く評価されているのである。実際、全1巻の作品としては異例とも言えるアニメ化を、連載終了から14年後の1990年に果たしており、1989年には、ゲーム化もなされているのである。 作品内容は、ヤマトタケルの転生体であり、古代縄文人の血を引く主人公「山門武」が、謎の老人「竹内」と出会い、神話より運命づけられた宇宙の真理に選ばれし者、アートマンにいたるまでの話を描いた作品である。 暗黒神話は、多くの専門用語(宗教、神話等)が登場する事でも世に知られる作品で、ブラフマンや武内宿禰の解釈等、諸星大二郎の深い知識は、多くの漫画ファンから絶賛されたのである。
暗黒神話の評価
暗黒神話の感想
歴史に残る漫画性を廃した漫画
漫画としてありえない偏った選択神話解釈を得意とする諸星大二郎。前作「孔子暗黒伝」が歴史性とドラマ性を持ったいたのに対して、本作は特に「神話解釈」に重点を置いている。キャラクター性とドラマ性はほとんど捨てた、と言ってもいいほどだ。そもそも主人公武にキャラクター性が低い。登場時点からクライマックスまで他者の都合とか既に決まっていた定めに振り回され続ける。主人公と言っていいのかわからないほど自主性がない。唯一彼が自主性を発揮するのは父と母の死により菊池彦を倒す決意をすること、その一点と言っていいだろう。クライマックスの馬頭星雲の行方を任されての選択は彼によるものではあるが、そこまでのキャラクター性がないため、絶対悪になることから逃げただけ、という見方もできる。余談ではあるがエヴァンゲリオンの庵野氏は諸星大二郎から影響を受けている、と公言もしており、本作のラストの選択はエヴァのシンジがした選択...この感想を読む