レキシントンの幽霊の感想一覧
村上 春樹による小説「レキシントンの幽霊」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
村上春樹の短編集
村上春樹の短編集。とても読みやすく、話も面白い。ただ、表現はやはり、村上春樹的なので、苦手な人には向かない。私も読みはじめてから数十ページたつまで、いろいろむずがゆかった。タイトルになっている、レキシントンの幽霊はすごく面白かった。アメリカにすんでいたとき、知り合った男に、1週間、家の留守番を頼まれる。その家で、夜中、幽霊がパーティーをしているという話。死を受け入れるためか、家族が死んで眠り続けるという記述もある。村上春樹は、死など、「失われたきり、もう二度と戻ってこないもの」についての話が本当に好きだな、と思った。どの作品を見ていても、そういう、諸行無常的な記述がある気がする。
やはり秀逸
なんとなく敬遠していた村上春樹さんでしたが、本書を購入しました。一気に読み終えました。こんな気軽に読める短編集もとても面白いですね。ストーリーが素晴らしい。余裕な時間がない時にやっぱり短編のほうは読みやすいと思いますね。本書の描写は不思議な気分になりますが、とても奥の深い作品です。いろんなことを考えさせられました。読後はとても優しい気持ちになります。人のつながり、自分の内側、いろいろな意味で自分を見つめ直すいままでにない内容でした。楽しく、そして底無しの怖さを秘めた七つの短編を収録。村上春樹の独特の世界観が好きな方にはとても楽しめる内容です。
-----短編------
村上春樹の短編はどれをとってもハイクオリティです。独特の世界観にいつのまにか引き込まれていきます。本のタイトルに『レキシントンの幽霊』を選んだり、「底無しの怖さを秘めた七つの短編を収録」と紹介したりしていますが、そのようなホラーじみた作品集ではありません。全体を通して感じられるのは「孤独感」です一番印象に残ったのは「沈黙」と「七番目の男」だった。人の悪意ほど恐ろしいものはない。一人の人間の悪意が多くの人たちを動かしていく。そしてその悪意が特定の人間に向けられたとき、悲劇が始まる。「七番目の男」の主人公は、少年の頃に親友と海を見に行くが、突然の大波に親友をさらわれてしまう。迫りくる大波から親友を助けることができたかも知れないのに、彼は恐怖にかられて自分だけ逃げてしまった。以降、彼は波の恐怖と自責の念にさいなまれながら生きていくことを強いられる。それから、「氷男」の悲しさと、「トニー滝谷」...この感想を読む
「多崎つくる」の前説的作品を含む、珠玉の短編集。
2013年、『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』は、村上春樹の何冊目かのミリオンセラーとなりましたが、この本のなかには、「多崎つくる」のイントロダクションとも呼ぶべき「沈黙」という短編が収録されています。「沈黙」は全国学校図書館協議会が刊行している、集団読書テキストというシリーズにも収められ、これは名前から推測するに、授業で大勢で読み、内容を討議したり、感想をしたためたりするようなテキストと思われます。ともすれば難解と言われがちな春樹作品の中でも、「沈黙」はそういう意図にぴったりあてはまるものだと思います。「多崎つくる」は学生時代、所属していたグループ全員から「ハブ」られ、人間不信に陥る、という設定ですが、「沈黙」はその部分をさらにこまかく、鋭利にえがいたような作品です。するどく、ひりひりとしながら、じんわりとした読後感が残る作品です。とても地味なお話ですが、村上春樹の中で、私が最も...この感想を読む