人として当たり前のこと
この作品を子供の頃に読んで、余りいい印象を抱かなかった、という人は多いかもしれない。 キリスト教の用語と西洋独特の風習、イギリスの風土に基づいた事柄がたくさん出てくるので、読むのは少し難しい。 ただ、ここに何が書かれているのかといえば、人間として当たり前に持っていたい『心』だ。 『汝の隣人を愛せ』というまでもなく、自分本位に生きるのではなく相手のことを思いやる心、自分は自分ひとりで生きているのではなく周囲の人間に支えられてあるのだということを自覚すること、それが書かれている。 舞台がクリスマスだが、西洋のクリスマスは日本のものとは違い、友人や家族と家に集まり、今年一年の無事を祝い、苦労を労い、来年もいい年であるようにと祈りを捧げる重要なイベントだ。間違っても日本のクリスマスを想像してはいけない。かと言って、日本では何に当たるのかと考えると難しい。お正月もお盆も、親戚で集まることなく、旅行に出かける人が増えてきた。 そう考えると、この作品はとても羨ましい世界を描いているように思う。日本は、いろんな宗教や文化を受け入れすぎて、結局どれにも属さない国になってしまった。愛国心を語るわけではないが、365日、いつどこであってもある程度の水準のサービスが受けられる日本は、物理的には豊かかもしれないが、精神的にはスクルージ以下なのかも知れない。 本当の豊かさとはなんなのか、今一度、この本を読んで考えてみるのもいいかもしれない。
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