人として当たり前のこと - クリスマス・キャロルの感想

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小説レビュー数 3,368件

クリスマス・キャロル

4.834.83
文章力
4.33
ストーリー
5.00
キャラクター
4.67
設定
5.00
演出
4.83
感想数
3
読んだ人
3

人として当たり前のこと

4.54.5
文章力
4.0
ストーリー
5.0
キャラクター
4.0
設定
5.0
演出
4.5

この作品を子供の頃に読んで、余りいい印象を抱かなかった、という人は多いかもしれない。 キリスト教の用語と西洋独特の風習、イギリスの風土に基づいた事柄がたくさん出てくるので、読むのは少し難しい。 ただ、ここに何が書かれているのかといえば、人間として当たり前に持っていたい『心』だ。 『汝の隣人を愛せ』というまでもなく、自分本位に生きるのではなく相手のことを思いやる心、自分は自分ひとりで生きているのではなく周囲の人間に支えられてあるのだということを自覚すること、それが書かれている。 舞台がクリスマスだが、西洋のクリスマスは日本のものとは違い、友人や家族と家に集まり、今年一年の無事を祝い、苦労を労い、来年もいい年であるようにと祈りを捧げる重要なイベントだ。間違っても日本のクリスマスを想像してはいけない。かと言って、日本では何に当たるのかと考えると難しい。お正月もお盆も、親戚で集まることなく、旅行に出かける人が増えてきた。 そう考えると、この作品はとても羨ましい世界を描いているように思う。日本は、いろんな宗教や文化を受け入れすぎて、結局どれにも属さない国になってしまった。愛国心を語るわけではないが、365日、いつどこであってもある程度の水準のサービスが受けられる日本は、物理的には豊かかもしれないが、精神的にはスクルージ以下なのかも知れない。 本当の豊かさとはなんなのか、今一度、この本を読んで考えてみるのもいいかもしれない。

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心温まるクリスマスの物語

物語の根底にあるクリスチャン的思想本作の物語の根底には、キリスト教的な思想があることがうかがえる。イエス・キリストの生誕を祝う日であるクリスマスがとても大事にされているという点はもちろん、主人公であるスクルージの甥が語る「クリスマスは親切な気持ちなって人を赦してやり、情け深くなる」という考え方も、またスクルージをたずねて寄付金を募った紳士の貧困者を助けたいという思いも、キリスト教でいう『赦し』であり、『隣人愛』である。またスクルージの前に現れた過去の幽霊の頭部の光は、どこか神の祝福を思わせる。過去の霊がその光を消そうとするスクルージ(人間)の手を罪ふかいと罵り、それを隠す帽子が人間の欲望が凝り固まってできたものだと言う、それらのことも、やはりキリスト教のイエスと罪深き人々の関係を彷彿とさせる。さらに現在の幽霊の言う「貧弱な食卓にこそ(現在の霊特製の、特別な)香味が必要」という台詞は、キ...この感想を読む

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  • めるりんめるりん
  • 1466view
  • 2097文字
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5.05.0
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  • 260view
  • 2065文字

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