自分のこの体がアイスクリームのように溶けて流れてしまえばいい
さっちゃん
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女に借金、挙句の果てに泥棒を働く詩人の、内縁の妻が語るという形式。今でもダメンズなんて言われますが、そういうのは昔からいたのだなと思います。旦那の泥棒被害にあった料理屋夫婦が家に押しかけてきて、それを妻に語るシーンは、笑い事じゃないけれど軽妙で面白いです。ダメすぎて笑いが出るというか、逆に清々しいくらいです。二人の息子は障害があるようで、これはダウン症だったといわれる太宰の実の息子がモデルになっているようです。一人息子を抱えて、旦那の盗ったお金を返そうと、料理屋で働く妻。何があってもくじけない妻が、何も分かってない夫に最後に言い放った「人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ」という台詞が、心にずっしり響きました。
ひと事で言うならばかなり退廃的な小説です。映画化もされていますが、借金と女まみれのどうしよもない亭主を持った女性が抵抗するすべもなく落ちて行く様子が書かれています。読み終わった後に、かなり救い様のない気持ちになってしまうので、落ち込んでいる時には読まない方が良いと思います。ただし『こんなに暗い人生もあるんだから、それに比べると私はマシ。』と考えられる人には良いのかもしれません。みずからも女癖の悪さと自殺癖でハチャメチャな人生を送った太宰らしい小説です。現代の若い女性が果たしてこの様な状況を理解するのかは疑問ですが、とりあえず一度は読んでもらいたい小説です。
さっちゃん
駄目な夫がツケを貯めた飲み屋で、夫は必ず戻ってくると嘘をついて働く主人公のモノローグ。
さっちゃん
物語のラスト、さっちゃんも浮気をし、夫婦関係も崩壊してきた頃、新聞に悪い批評を書かれたことと、過去に犯した罪についての弁解を話した夫に対しての言葉。