一体あなたは何者?
人間の本質ってこうだよね
主人公に共感。共感性の強い小説だと思った。自分より不幸な人を見つけては嘲笑っている。自分を「何者」かでもあるかのように人を分析して自分が上に立つ。この感情は醜いものだけれど人間の本質だなと感じた。主人公が就活に一度失敗して二度目の就活生だったという事に驚いた。それを知ってからもう一度読んでみると全然見え方が違う。就活に挑む仲間に出会って励ましあっているかのようで心では成功を祈っていない。そういう汚いタブーとされている感情を目の当たりにしたとき、とても恐く苦しくなった。朝井リョウさんはこういう人間の本質的な小説がすごく上手だと思う。「スペードの3」という小説も人間ってこういう感じだよねという感想をいだき人間というものをよく観察しわかってらっしゃると感心した。人間の本質的な所でいくと東野圭吾さんの「秘密」なんかも本質をつっこんで描かれいてこの小説同様読んでいて苦しい気持ちになる。こういった読み終わった後になんだか苦しい気持ちになり、自分だったらどうかと考えることが出来る小説が好きだなと改めて感じた。
みんな闇だらけ
登場人物全員に闇があるように感じた。一見、読み終わった直後は主人公一人の闇の大きさを表現したものに感じた。しかしよく考えると主要登場人物はみんな主人公が就活2度目なことをわかっている。その状況がどんなに残酷なものか。それを知った上での発言かと思うと主人公以外のセリフにも人を嘲笑っているかのようなセリフが多々ちりばめられているなと感じた。特にこのキャラクターがよかった、このキャラクターが好きというのがないのがこの理由な気がする。そしてこの主要登場人物の闇に気づく自分も闇の住人なのではないかと不安で暗い気持ちになってしまった。闇の世界に引っ張る力もこの小説は感じた。明るい気持ちにはなれなかった。これが正常な人間の感情なのか。この本を読んで何も共感性を抱かないよりは普通に人間らしく生きているのかもなとも思う。最後に自分の闇を指摘されて自分自身を見つめなおすきっかけをもらった主人公には一筋の光が見えた。きっとこの闇を自分自身が理解することで明るい未来が待っているかもしれないなと感じられた。
自己肯定力・自己否定力
自分自身、自己肯定力が強い人って羨ましなと思う傾向がある。どんな状況でも自分を否定せず自分の行動を肯定することが出来たらどんなに生きやすいだろうと思う。自己肯定力を高めるには幼少期に愛された経験が重要であると聞いたことがある。主人公も幼少期に愛されて物凄く愛されてすごく大事に育てられたから自己肯定力の高い人間に育ったのだろうか。主人公を見ていると自己肯定力の高さがプライドの高さにも繋がってこじらせてすごく生きにくい性格になっている。私の理想とする自己肯定力の高さを飛び越えて自分自身をまったく分析できない人間になってしまったんだろうなと思った。なにごとも程々がちょうどいいのだろうなと感じた。
自分は何者なんだろう
この小説を読み終えた後、自分は何者なんだろうかと考えずにはいられなかった。私も人のことを分析する癖がある。人のことを分析しては他人のことを心配してみたり。その心配は、心の底から心配しているのだろうか。私も主人公と同じように人にそのことを指摘される場面に遭遇したらと考えるととても恐い。自分の醜い部分を隠して上手に生きているつもりなのに誰かその本質を見抜いていて指摘されることがあったら・・・。私は生きていけないのではないかと思う。終盤主人公が醜い部分を指摘されているときすごく胸が苦しくて小説を読み進めることが大変だった。読むのが苦しくなったので勢いでスピードをあげて一気に読み上げてしまった。これだけ自分の心にどしんと打撃を与える小説には今後あえないのではないかと思った。
読めた人はラッキー
自分はこの小説に出会えてラッキーだったと思う。自己啓発というわけではないかもしれないが、「人の振り見て我振り直せ」という言葉がピッタリなのではないかと思う。この小説を読んで自分を見つめなおすきっかけをもらえたと思う。就活の時代を経験し終えた年齢になった今だから共感できることが多いと思う。これを10代後半で読めた人はもっとラッキーかもしれない。これから就活が待ち構えている人は、就活に対してすごく怖いイメージが出来しまった人もいるかもしれない。しかし、自分はリアルな就活事情をもっと知っておきたかったなと思った。就活においても仕事をしていったり生きていくには自分自身をもっと理解してありのままを受け入れていかなくてはならない。
自分が考えた配役
既に映画化もされているが、私はまだ映画は観ていない。自分が小説を読んでいるときに思い浮かんでいた顔のイメージで考えると主人公は佐藤健さんより普通の男の子なイメージの神木隆之介さんがいいかなと思った。映画では菅田さんが演じた役を佐藤健さんが演じられたほうが私のイメージにはピッタリだなと感じた。そんな想像をしながらまた改めて映画版も拝見させていただこうと思う。
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