何者の感想一覧
朝井 リョウによる小説「何者」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
一体あなたは何者?
人間の本質ってこうだよね主人公に共感。共感性の強い小説だと思った。自分より不幸な人を見つけては嘲笑っている。自分を「何者」かでもあるかのように人を分析して自分が上に立つ。この感情は醜いものだけれど人間の本質だなと感じた。主人公が就活に一度失敗して二度目の就活生だったという事に驚いた。それを知ってからもう一度読んでみると全然見え方が違う。就活に挑む仲間に出会って励ましあっているかのようで心では成功を祈っていない。そういう汚いタブーとされている感情を目の当たりにしたとき、とても恐く苦しくなった。朝井リョウさんはこういう人間の本質的な小説がすごく上手だと思う。「スペードの3」という小説も人間ってこういう感じだよねという感想をいだき人間というものをよく観察しわかってらっしゃると感心した。人間の本質的な所でいくと東野圭吾さんの「秘密」なんかも本質をつっこんで描かれいてこの小説同様読んでいて苦しい...この感想を読む
内面
読後感まず、率直な感想を述べる。「不快だ」。唐突で驚いたであろうか。しかし大抵の人は薄々共感してくれるのではないかと踏んでいる。ところで、これはこの作品への批判ではないということを明記しておきたい。というのも、不快というのは作品の表現や構成を指して言っているのではない。もっと言えば、この作品を指して言っているわけでもないのだ。何が言いたいかというと、私はこの作品を通して、「自分自身」への不快感を持ったのである。以下、物語の進行に沿って詳細を見ていく。 序盤、私はニヤニヤした。そう、ニヤニヤしたのである。余りにも共感できたから。ギンジの「演劇を頑張っている」アピール。理香子の「就職活動を一足先に始めている」アピール。隆良の「就職活動という主流に安易に乗らない自分カッコいい」アピール。しかもそれらが「SNS」という現代特有のネット社会を通じたものであるという点。主人公はこれらを嘲り笑っているの...この感想を読む
読み返せない、痛い小説
面白かった!と思う小説でも、ストーリーがつらすぎたり悲しすぎる結末を迎える小説はなかなか再読できないのですが、その一冊がこの作品です。四人の大学生の就職活動の様子を描いた作品です。私はすこし世代が違うので、完全に感情移入できたとは言えませんが、おそらくここ10年以内に就職活動をした世代なら「こんなこと考えた」とか、「こんな人いた」とか、あるいは「これは自分だ」と思う節が少しくらいはあるのではないかと思います。今若者の多くが使っているSNSが重要なキーになっていて、その匿名性がこの小説の「痛さ」を加速させています。一見状況を一番俯瞰しているように見える主人公が、実は「意識高い系」カップルの二人よりもはるかに「痛い」そして闇を抱えている人物であるということが、このSNSを通じて判明するラストは圧巻のようで「あああ~なんでばれちゃったの!!なんであえて本人に言っちゃうの!!」と一人悶絶してしまう展...この感想を読む
第148回直木賞受賞作!
第148回直木賞受賞作「何者」。気になっていたので手に取りました。平成生まれの著者、朝井リョウ氏。自分よりもずーっと年下の男性作家。まだ若いのに、こんなに深く鋭く考察できるなんてすごいと思います。今時の若者のリアルを感じながら、昔の自分を見ているような気分でした。わたしは何者かになれるのかとあがく気持ち。歳をとってからはあまり感じなくなってきたけれど、昔この本に出会っていたらどう感じていただろうかと思う。SNS、FB、ツイッタ―と新たな手段で自分の本音を出すこと、正面から本音をいうことに恐れを感じるようになっている自分に気づかされた。