実はスピルバーグ監督作品です。
映画館の外まで長蛇の列。
この映画が公開された1975年12月の事を今でも鮮明に覚えています。当時、私は6歳でした。公開前から物凄い前評判と宣伝で、父親にせがんで連れて行ってもらったのですが、映画館の外まで長蛇の列で、寒い中、一回上映分どころか、二回上映分くらい待った記憶があります。巨大サメが人間を襲う、このジョーズを始め、人類は巨大生物が人間社会を脅かすという映画がかなり好きなのです。キングコングも何回もリメイクされていますし、その昔だと若い人はご存知ないかもしれないですが、”巨大生物の島”(この映画は”新・巨大生物の島”という続編も作られた!)、テンタクルズ(巨大タコが襲ってくるもの)、日本だとゴジラやガメラなど、昔から巨大生物ものの映画は時代・世代を問わず大ヒットするのです。何故?それは怖い物見たさ…ではないかと思います。自分が安全な所から見る分には、これ以上面白い見世物は無いのです。でも、その中でも大ヒットしてる映画の背景にはただのパニック映画というだけではない、深いストーリーがあったり、その背景に隠されている。その深さが本当の意味でのパニック映画の根底を支えていて、ただ単に襲ってくるだけなら、これほど長い間人々に見続けられる事は無いと思います。
サウンドトラックとスピルバーグ監督の凄さ。
もう語りつくされているとも思えますが、この映画を語るにはやはりジョン・ウィリアムズのサウンドトラックの凄さでしょう。アカデミー作曲賞にグラミー賞受賞ですよ。サメが全くスクリーンに映ってなくても、音楽だけで「ああ、サメがやってくる!!!」とじわじわと迫りくる恐怖をここまで表現してるというのはもう天才的としか言いようがありません。今、おばさんになって聞いても、鳥肌が立つくらい怖い。同時に、この映画の凄さはスクリーンに全くサメが映ってなくても、カメラが水面や水面下を時にゆっくり、時に早く、時に大疾走するだけであたかもサメが実際に見ているシーンかのように思える演出をしているところです。実際、この映画、サメが出てくる場面は時間にして凄く短いのではないかと思います。それに気がついたのは、随分と大人になってからですが。あと、この作品がスピルバーグ監督のものであるというのも、今ではもう忘れ去られているのではないかと思いますが、この作品がスピルバーグ監督の名を世に知らしめた原点という、記念すべき映画でもあるのです。このジョーズの後、数えきれないほどの大ヒットを世の中にこれでもか!という位連発するのですが、私の中では、スピルバーグ監督作品の中で一番好きなのは、今も、昔も、これからも変わらず、この「ジョーズ」であり続けると思います。
俳優陣の力量。
この手の映画のイメージとしては、先ずは人類を脅かす生命体が物語の核であると思うのですが、この映画の本髄は実はサメではなく、またチーフ・ブロウディでもなく、個人的にはイギリス人俳優ロバート・ショウ演じるクイントなのです。この人は凄い俳優さんで、医師を目指してケンブリッジ大受験中に、王立演劇学校に先に合格してしまったという風変わりな経歴で、このジョーズの役は他の彼の出演作のイメージとは違っていて、そもそもサメの映画ですし、しかも最後はサメに喰われてしまうし、悪役的な感じでもありますから、よく出演を承諾したな・・・といういう以上に、よくぞ承諾してくれた!と言いたくなるほど、この映画の一番面白いところを引っ張っていったのはこのロバート・ショウ氏だと思います。最も、このロバート・ショウの役柄と演技の凄さに本当に感服したのは大人になってからなので、小さい時はただただイラつくオジサンだったのですけど。大汗。この映画は目線だけで殆ど姿を現さない、ひたすら窺わせ、チラ見せする事でより人々を引き付けたサメの演出、そして、映画の後半のサメ退治に出陣して食べられてしまうクイントという出演場面の少ない一つと一人の登場人物がメインだったと思います。
本当のクライマックス。
最後にこの映画の本当のクライマックスの部分は、クイント船長の過去の話。サメ退治途中に酒をくみかわしながらの昔話。実は衝撃の食べられてしまうシーンよりも、こっちの方が本当のクライマックスとの言えるシーンで、戦時中、日本に原爆を運ぶ途中に日本軍によって沈没させられ、しかし、秘密裡に行われていたので、SOSを発信できず、サメの泳ぐ洋上で何日も過ごした経験を「語る」だけなんdすよ。その回想シーンとかは全く見せないのに、その「語り」だけで、すべてが回想シーンを見てるかのように頭の中に思い描く、これは凄いです。映画だという事も忘れる位の、その演技力は圧巻です。これからも一生、何度見てもこのシーンを見る時は固唾を飲んでみてしまうと思います。ただの巨大サメが襲ってくるパニック映画というだけではないジョーズが名作と言われる由縁が、ここにいつも存在しています。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)