日本だけでなく世界のサッカーに影響を与えた功績は大きい
まぎれもなくサッカー漫画ではナンバーワン
著者の高橋陽一氏を非常にうらやましく思うのは、漫画家デビューのきっかけになった「キャプテン翼」が、その後週刊少年ジャンプで連載を勝ち取り、日本国内だけではなく世界のサッカー少年の心に大きな影響を与えたことである。
しかも、日本にとどまらず、現在プロとして活躍している世界中の著名な選手も、キャプテン翼から影響を受けた選手も多いと聞く。
自分の作品が、世界中で愛され、一つのスポーツの活性化に寄与できるなど、これほどスポーツ漫画の作者として嬉しいことはない。
連載当初からリアルタイムでこの作品を読んでいた世代からすると、当時日本にはプロリーグがなく、この作品の序盤にあるように、プロになるには翼や若林のように、ブラジルやドイツに行くしか手段がなかった。その後日本にプロリーグができたのは、はっきり言ってキャプテン翼によってサッカー人気が過熱し、サッカーというスポーツの知名度が上がったことが起因していると言わざるを得ない。
漫画で社会現象を起こせるというのは、並大抵のことではない。それだけこの作品が、少年の心をつかむ力に長けていたと言える。
そういう意味では、サッカー漫画は色々あるが、世界中のプロ選手すら魅了したという意味では、キャプテン翼はサッカー漫画ではナンバーワンであると思う。
この作品で知った必殺技の数々
サッカーをやっていた子供でも、キャプテン翼で初めて知った技術というのは多いらしい。
キャプテン翼内には、立花兄弟のスカイラブハリケーンなど実際にはできない、アストロ球団並みの凄い技もあるが、一般的なルールに基づいた、実際行うことが可能な物も当然ある。
中でも、オフサイドトラップという武蔵FCが用いた、わざと相手をオフサイドに陥れる方法は、小学生のサッカー少年には知らない子供も多く、衝撃的だったようだ。
そもそもオフサイド自体を知らず、キャプテン翼で知ったという人も多い。
高橋陽一氏ご自身は、どちらかというと野球の方が得意な方のようだが、漫画だからという誇張もあるものの、実際こんな選手になってみたいと少年に思わせるような魅力的な描き方ができる作家だと思う。前述のアストロ球団並みのできるわけがない技ですら、もしやできるのでは?と思ってしまう魅力があった。
連載当時、スカイラブハリケーンの練習を教室でやって組体操状態になり、転んでいる男子が全国に続出し、ゴールバーを蹴っ飛ばして若島津の三角蹴りを実際に真似してやってみる者もいた。
高等な技術だが、ドライブシュートやバックスピン、オーバーヘッドなどにも果敢にチャレンジする少年もいた。こうした真似をしていた少年たちが、インターハイで優勝し、大人になる頃にはプロリーグが日本にもできて、国内でもプロになれるようになった。
ワールドカップ優勝という翼の夢はまだかなってないが、不可能と言われたその夢に、近いところまで日本が来れたのは、キャプテン翼の功績が大きい。
とにかく試合が大半
ターゲットは基本小学生から高校生男子であるはずのこの作品だが、意外にも女性のファンもかなり多かった。当時は東映まんが祭りという映画でキャプテン翼も上映されていたのだが、女の子もかなり観に来ており、アニメ人気も相当な物であった。
チョット特殊な応援の仕方をしている、BL(ボーイズラブ)好きの女性ファンは、ファン心理の目的が違うのでここでは除外させていただくが、女性ファンというのはつい、試合以外の部分でのキャラクターの動向も気になってしまう。
マネージャーの早苗ちゃんと翼が両想いになれるのかとか、弥生ちゃんと三杉くんはうまくいってるのかとか、日向君が苦労性で学生なのに家計を助けるために必死だとか、そういうエピソードが大好きなのだ。
キャプテン翼は、作品の大半が試合である。もちろん試合も面白いのだが、試合が長いからこそ、試合以外の日常が気になって仕方ないという現象が起き、キャラクターの意外性や恋愛話が、凄く新鮮に映ってキャラクターを魅力的にしている。
しかし、この作品の中学生篇の全国大会、南葛対東邦は、いったいいつ終わるのか、当時リアルタイムで週刊連載を読んでいたファンは、永遠に終わらないような気がするほど長い戦いであった。
なんと高橋陽一氏も、執筆途中でファンの声や日向がかわいそうになり、同店引き分けにラストを変えたという話もあるほどである。途中でラストを変えるという仰天技が可能なほど長かったという事だ。
結果、素晴らしいラストになり、ファンの声が漫画のストーリーに影響した嬉しい事例だ。
アニメとの小競り合い!?
前述試合が長すぎることにも起因しているのだが、キャプテン翼は人気がピークだった当時、週刊少年ジャンプの連載とテレビ東京のアニメが同時に人気を博していた。
しかし、アニメがどんどん原作に追いついてしまい、ついにはアニメ側が時間稼ぎをして原作の連載を進めてくれないと話が先に行かない事態になってしまったのは有名な話である。
よって、当時のキャプテン翼の、特に南葛と東邦の試合前や試合中は、恐ろしいくらいの時間稼ぎ作戦が行われている。それは主に、過去の回想シーンの挿入だったりするのが、本当にやきもきしたものだ。
キャプテン翼は試合中の大ゴマも多い。東邦対明和東戦でのキーパー若島津のシュートは、そのインパクトから2ページを使っての大ゴマになっており、迫力はあるが当然のことながら話の進むスピードも遅い。これはアニメ制作サイドにとっては、非常に苦労が多かったろう。
ファンはやきもきする反面、アニメのオリジナル展開なども見ることができ、結果的には岬君が転校先でどうなったかという名作「ボクは岬太郎」を生み出すきっかけになったのも引き延ばしのおかげなので、恩恵もあったように思う。
女の子が物凄く地味
サッカーの試合を重視する男子ファンにはどうでもいいことかもしれないが、キャプテン翼に出てくる女性キャラは、非常に地味である。
はっきり言って顔はかわいい。あねごこと中沢早苗などは明らかに可愛いし、性格も一途で好感が持てる。後輩の久美ちゃんや、三杉の彼女の弥生ちゃんとは髪型以外見分けがつかないという難点はあるものの、個性はそれぞれ光っている。
しかし地味だと感じた理由は、高橋陽一先生は、その後のキャプテン翼の続編作品でもそうなのだが、どうも女の子の服装の流行りに疎いようで、かわいい私服を描くのが苦手でいらっしゃるようである。
アムラーが台頭していた時期に連載されていたワールドユース編でも、早苗ちゃんは無地のポロシャツに短パンという服装ばかりだし、ちょっとはおしゃれ?という弥生ちゃんも、サッカーの応援にベレー帽?という珍妙な服装をしている。レプリカユニフォームと顔のペイントなど、もうちょっとサポーターとしての派手さがあってもいいように思ったし、年頃の女の子なので、もうちょっと今どきのファッション誌を参考にかわいい洋服を着せてあげてもいいのにと感じた。
せっかく可愛らしい女性キャラが沢山いるので、ファッショナブルにしてあげてほしいものだ。
今後の展開に期待
キャプテン翼で翼がブラジルに立つまでの話は、何となく翼が今後夢を叶えるであろうことを予感させて終了する。その後も続編が次々に執筆され、キャプテン翼は高橋陽一氏にとってもライフワークになっている。その中で、やはり本作で翼が早苗ちゃんに無言で誓ったように、夢をかなえてほしい。
日本が実際の試合で惜敗したりすると、翼を出せよ!日向はいないのか!とつい言いたくなってしまうほど、この作品の力は大きい。
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