奇妙な新聞広告からはじまる事件 - 赤毛連盟の感想

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赤毛連盟

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奇妙な新聞広告からはじまる事件

4.04.0
文章力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
5.0
設定
3.5
演出
4.0

目次

はじめに

本作はある新聞広告から始まります。

依頼人である質屋のオーナーは奇妙な新聞広告があり、自分はそれによって騙されたとホームズの元に相談に訪れます、その新聞広告は、赤毛の人限定でそこそこの給金と引き換えに簡単な仕事を依頼したいという内容でした。

質屋のオーナーは燃え上がるような赤毛であり、仕事を受けることに成功しますが、ある日突然仕事は打ち切りとなります。

深刻な被害を受けた人がいないこの件から、ホームズは重大な事件へと発展すると確信し、捜査が始め、持ち前の観察眼と論理的思考により、その背後にある事件を明らかにしていきます。

ホームズがどのようにして、この奇妙な新聞広告から事件の真相の明らかにしていくかが、この物語の魅力となっています。

ありふれて特徴のない事件が、人々を悩ませる

これは作中でのホームズの台詞です。まさにこの赤毛連盟を的確に言い当てた言葉です。

深刻な被害者がいない新聞広告という一見するといたずらとも捉えることが出来る出来事から始まる事件ですが、この物語の中に隠されているのは『ありふれて特徴のない事件』、つまりどこにでもあり曖昧模糊としたもの、突き詰めれば未知なるものではないかと考えます。

未知なるもの

ここで一度『未知なるもの』について細かくお話しします。

ここでお話しする『未知なるもの』というのは、正確な形を得ていないもの、正体不明のものをいう意味で使用しています。

作中でも『未知なるもの』について、ホームズとワトソンのやりとりがあります。

物語の冒頭で、ホームズが依頼人の生活の様子を言い当てるシーンがありますが、そこでワトソンに言い当てられたのは超能力ではなく、論理的推理であると伝えます。また続けて未知であるということはそれだけで偉大であるといったことをワトソンに伝えます。

未知であることはその本質がどのようなものであれ、それだけである種の力を保持していると言い合わらしているように感じます。

また別のシーンではホームズがワトソンに、依頼人の店の様子を見に行く際に、リボルバーを用意するように伝えます。

それまで血なまぐさい描写が皆無であっただけに、不気味であり、その先の展開がわからない、『未知なるもの』であると読者に訴えて、先の展開が非常に気になるものとなっています。

ホームズというヒーロー

優れた観察眼を持ち、わずかな事象から推論を組み立て真相を明らかにする。

ホームズは非凡な才能を持ち合わせており、それ故に人々を魅了します。

ホームズにとって『未知なるもの』は退屈な毎日から、非日常へと誘ってくれるものであり、それ故に恐れることなく、事実だけを積み上げ、真相を明らかにすることが出来るのでしょう。

作中でも事件解決後、ホームズがワトソンに退屈な毎日からこのような事件が自分を非日常へと連れて行ってくれる、そして事件が解決すれば日常へと戻ると話しています。

ホームズに対して、私たちは未知なるもの、不気味なもの、意図が理解できないものに対して恐れを抱きます。恐れるから思考から排除し、そして目の前には謎が残ります。

しかし、同時に私たちは『未知なるもの』に惹かれもします。それ故にホームズによってそれが暴かれたときに、晴れやかな気分になるのです。

ワトソンと読者

そんな『未知なるもの』と正面から向き合うホームズとは対照的なワトソンですが、彼に対して私を含めて多くの読者が、親近感を抱くのではないでしょうか。

物語の中で、ワトソンはホームズといると自分が愚鈍な人間であると思い、劣等感を感じてしまうと述べています。

医者であり、多くの人よりも高い知能を有していると思われるワトソンですらそう思うのです。

私を含めて、多くの読者がワトソンに共感できるのは、このことに尽きるかと思います。読者によってはこのことで暗鬱な気分になり、本を読み進める手を止めてしまうかもしれません。

しかし、どうして作者は華麗に推理を展開していくホームズではなく、ワトソンにを主人公にしたのでしょうか。

それはホームズが主人公であると多くの読者とはかけ離れた存在であるため、物語に入り込めないという点と、ワトソンという人物から事件を俯瞰するからこそ、事件が味わい深いものになるからだと考えます。

さいごに

赤毛連盟ですが、分量もさほど多くなく、また内容も非常にわかりやすく仕上がっています。

物語終盤の銀行強盗を捕まえる際にも血を流すことなく、事件を解決するので、そういった類のものが苦手な方にもお勧めできます。

また100年以上前の作品ということもあり、媒体にかかわらず様々な形で世に出回っていますので、入手しやすいというのも、この物語を楽しむうえで助けになってくれるかと思います。

もしまだホームズを手に取っていない方がいましたら、最初の一冊にお時間があるときにでも手に取ってみてはいかがでしょうか。

そこには華麗な推理を披露するホームズと、そしてとても魅力的なワトソンが私たちを待っているのです。

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