1980年代の傑作『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』 - 超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますかの感想

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1980年代の傑作『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』

4.54.5
映像
5.0
ストーリー
3.0
キャラクター
4.0
声優
4.5
音楽
5.0

目次

1980年代という時代

『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』は、1980年代の劇場版アニメです。
今と同じで、アニメオタクが沢山いました。

パソコンはありましたが、現在と比べると全く子供だましのようです。
当時パソコンはPC98が主流で、ビジネス用か理系研究者用だったのです。プログラムのソフト面、コンピュータのハード面の両方が理解できていなければ、扱えない高価な代物でした。

動画を閲覧したり編集したりするには、まだ遥か未来になると思っていました。

いや、そんな想像もできないほど初歩的なコンピュータでした。
ハーディスクもMB単位でしかも高価だったので、保存のほとんどをフロッピーディスクに頼っており、フロッピーディスクも小さな本ぐらいの大きさだったのです。

数十年後は、ネット上にギガ単位・テラ単位で情報を保存できるなんて言っていたら、頭がおかしいと思われたでしょう。

CGのない時代のアニメーション、今では不可能

そんな80年代の中頃、1984年(昭和59年)に『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』が劇場公開されました。
当時、10代でした。映画館で観た作品です。けれども、今観たほうが味わいがあります。

今でこそ日本のアニメーションは、大人にもそこそこの評価を受けているけれど、あの当時は完全に、子供かオタクが観るものでした。

この程度の話に、スタッフがかけたエネルギーの凄さに驚かされます。この程度とは悪口ではありません。単なる男女の三角関係を描くために、マクロスに乗船している数千人の人のみ生存させて、数十億の人類を滅ぼしてしまう設定に呆然としただけです。

CGがない時代に、セル画のみでこのクオリティは恐るべし。

キャラクターの美しい造形、飛び交う戦闘機の描写、巨人宇宙人(男のゼントラーディと女のメルトランディ)の言語まで作り上げる凝りよう。そのため字幕が入っています。しかも、ゼントラーディとメルトランディでは違う言語にしているので、2種類の言語を作ったのです。
才能の無駄遣いの極みでしょう。

今のアニメ業界で、当時のようにセル画のみで、このレベルの作品を作ろうとすれば、確実に労働基準局から踏み込まれるでしょう。多分、アニメーターが疲労困憊のあまりに、過労死者が続出するからです。
アニメーション好きな連中が、好きなことをとことん極めた時代だったのです

敵の攻撃の表現が細かい

戦闘シーンの細かさも特筆できます。
映画の後半にマクロスに向かって、ゼントラーディ軍のビーム攻撃?があるのですが、核爆弾並のエネルギーであることを描いています。
核爆発のような、エネルギーが大きい爆発では、爆発中心部の空気が失われてほぼ真空状態になります。その結果、爆発地点から逆に、爆心地に向かって空気の流れがおこる。
そんなところまで、細かく表現されています。

ストーリー上のツッコミどころ満載

日本人は、長い間戦争を経験していないので、軍隊がどういった組織か、がさっぱり分かっていません。それは33年前から変わっていません。

前線で、命令が絶対であることは、軍隊の基本です。
後方で命令する上官が、今対峙している敵兵より恐ろしいからこそ、殺される恐怖を抑えて前進できる。
戦闘機パイロットの一条輝は、上官の早瀬未沙の命令を公然と無視しても何の罰も受けていません。軍法会議もありません。これでは軍隊とは言えない。
でも、仕方ないのかも。当時も今も平和ボケは続いているのだから。

そして、人類の大部分が、突然の宇宙人の攻撃によって虐殺されているのに、マクロスの人達は簡単にゼントラーディ軍と和睦してしまう。ありえないでしょう。

早瀬未沙の「涙が止まりませんよ」について

一条輝から、プロポーズのような告白を受けた早瀬未沙のセリフです。
このセリフ、当時からおかしいと感じていました。
「止まりませんよ」の最後の「よ」は何なのか。

普通の自然なセリフならば、「涙が止まらない」とか「涙が止まらないの」ではないのか。
なぜなら、その前に「どうしたんだろう。おかしいね」と自問しているからです。
好きな男と会話している最中に、「涙が止まりませんよ」と言うのは、いったい誰にこのセリフを発しているのか。ナチュラルに日本語としておかしい。

どうもアニメを観ている観客に対してのようです。
製作者は、キャラクターが舞台で芝居しているかのように作ったのでしょう。
突然なので前衛劇みたいです。

ベタでクサイ芝居も味がある

作品として非常にクサイ芝居が多いにもかかわらず、ディテールが緻密に描かれて、全体としてはインパクトが十分にあります。

クサイ芝居も限度を超えると味が出てくる。納豆か鮒ずし、シュールストレミングのようです。

やはり傑作なのかも。

世界観は未来を予知していた

リン・ミンメイは、マクロス艦内のアイドル歌手とのキャラクター設定でした。
ミニ・スカートと露出の多い服で踊り歌うのです。

10代の少女が、短いスカートを履いて踊り歌うのが画期的だったのかもしれません。
しかし、33年後には、その辺にいる普通の女子学生が、もっと短いスカートを履き、時には裸になって、人前で踊っているとは想像できませんでした。

また、戦争しか知らない巨人の宇宙人が敵役だったのですが、アニメより現実のほうが遥かに恐ろしい事になっています。

世界中では、約25万人以上の少年、少女が強制的に武器をもたされ、兵士として徴用されています。
彼らの親である、大人達も戦争しか知りません。

リアルな世界のほうが、本当に戦争しか知らない子供や大人を産んでしまったのです。

『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』から、妙に真面目なことを感じてしまいました。

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