今見直したいOVAの金字塔!機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争
ガンダムシリーズ初のOVA作品
79年からスタートしたガンダムシリーズ初のOVA作品です。OVAというと最近の若い人は何のことだろう?と思うかもしれませんが80年代後半~90年代にかけて一大ムーブメントをおこしたアニメのリリース形態です。それまでテレビ放送か映画作品しか媒体のなかったアニメにとって当時画期的で新しい作品の発表方法でした。テレビ作品よりもクオリティが高い作品が多く存在し、その中でもOVA聡明期に大ヒットを飛ばしたのが今作0080ポケットの中の戦争です。1巻あたり6万本も売れたと言われています。
OVAはVHSとLDでリリースされるのが通例でしたが定価が5000円前後と割高でしたので自分は専らビデオレンタル店でレンタルして観ました。当時既に大人だった方はおそらくLD-BOXなんかで集めていた方も多かったのではないでしょうか。LD-BOXなんて当時、夢の又夢でした。
作陣にマクロス関係者が多く参加
今作の特筆すべき点の一つが制作陣にマクロス関係者が多く参加しているという点です。オリジナルのガンダムのキャラクターデザインといえば安彦良和。現在はガンダムORIGINの漫画執筆とアニメ版の総監督としてその名を轟かせるガンダムファンで知らない人は居ないと言って過言ではない名クリエイターです。しかし今作0080のキャラクターデザインは80年代ガンダムと共にリアルロボット・アニメとして双璧をなした大人気作である超時空要塞マクロスのキャラクターデザインであまりにも有名な美樹本晴彦。そして今作のもう一つの特筆すべき点は監督もマクロスの監督の一人である高山文彦という点です。マクロススタッフが多く関わった今作は当時としてはそれだけでも大ニュースで観る前からワクワクさせられたものです。
人気声優が勢ぞろい
とにかく声優陣が豪華です。主人公アルはまだ11歳の少年ですが(当時リアルタイムで見た自分は9歳くらいかな?と思ってました)多くのアニメ作品はそうだと思うのですが少年のキャラクターは大人の女性が男の子っぽい声で演じます。しかし今作では少年アルの声を実際の少年が担当しているんです。演じたのは当時洋画の吹き替えでターミネーター2やグーニーズ等多くの少年の声を担当していた浪川大輔。現在はルパン三世の石川五ェ門の声等を担当されています。浪川氏の声も今作が映画っぽく見える一因かと思います。そしてバーニィの声にガンダムF91の主人公シーブックや無責任艦長タイラーのタイラー役で有名な辻谷耕史。そしてヒロイン クリスの声に新世紀エヴァンゲリオンの綾波レイや、らんま1/2の女らんまの声であまりにも有名な林原めぐみ。人気声優がたくさん出ているという点もこの作品が永く愛される理由の一つかと思います。
大人向けなストーリー
ガンダムシリーズ初のOVA作品としてTV版のガンダムに比べ大人向けに作られた今作ではありますが(ガンダムNT-1が最初全然出てこない!)そのストーリーもまた子供には若干難解とも言える大人向けな内容です。
舞台はファーストガンダムと同じ時代の1年戦争の末期の地球連邦にもジオンにも属さない中立コロニーであるサイド6です。主人公の少年アルと偶然知り合ったジオン軍の兵士バーニィとの不思議な友人関係を軸にストーリーは進んでいきます。年齢も立場も全く違った二人の関係。バーニィは作戦チームの下っぱということをアルに隠し一流パイロットだと言い張ります。強がって見栄をはるバーニィも又なかなか可愛い奴です。そして今作のヒロインはアルにとって年上のお姉さん的な存在の隣人クリス。おそらくクリスと年齢の近いバーニィはクリスに気になるような素振りも見せます。自分もクリスみたいな綺麗な女性が近所に住んでいたら気になって仕方ないことでしょう。
あまりにも哀しいエンディング
今作を当時リアルタイムで見た自分にとって一番の衝撃がエンディングでした。
中立コロニーサイド6の中で連邦が新型ガンダムNT-1を作っているということをジオンが突き止めます。そしてクリスマスにサイド6へ核ミサイルを落とす計画を立てます。新型ガンダムさえ破壊すればジオンはサイド6に核ミサイルを落とさないと考えたバーニィは愛機であるザクII改に乗り新型ガンダムを破壊する作戦を立てます。バーニィはなんて無謀なんだと思ったものです。
しかし作戦当日核ミサイルを乗せたジオン艦艇は既に降伏していました。降伏したニュースを知らないバーニィは一人、戦う理由のなくなった戦いに挑みます。
たくさんの人を守る為に特攻をするという行為は第二次大戦の際の神風特攻等、日本人の血に深く刻み込まれているものだと自分は思うのですが今作のバーニィも又、舞台こそ戦時中の日本ではありませんがそんな精神を感じました。
戦う必要がなくなったことをバーニィに教えるため走るアル。しかし現場にはコクピットを破壊されたザクII改と大破した新型ガンダムNT-1が横たわっていました。当時あっさりと破壊された主役機を寂しく思ったものです。
そしてガンダムのコクピットからは隣人であるクリスの姿が。ザクに誰が搭乗していたかを知るのはアル一人です。アルは大好きなお兄さんとお姉さんが殺しあいをしたことを知ります。当時、少年だった自分にとってものすごく衝撃的なエンディングでした。そしてバーニィが作戦前に作戦に失敗したときに大人に渡してくれとアルに渡した映像がさらに涙を誘います。戦う理由のなくなった戦いで命を落としたバーニィ。戦争の残酷さを強く感じるエンディングです。
制作人が「6話に分かれた映画」を作るイメージで制作したという点も頷けるとても映画的な作品です。大人になって観ても本当に面白い作品。はじめて今作を見るという人はもちろん当時見たという人にも今もう一度観直してもらいたい名作です。
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