天下に愛された男
三英傑では誰がお好みですか。
あなたは三英傑のなかで誰が一番お好きでしょうか?これはよく議論になるところでありますね。
私は1位秀吉 2位信長 3位家康 と言う風に考えています。友人たちには驚かれることが多いですね。なぜに秀吉か?それはこの小説を手にしたからに他なりません。吉川英治も司馬遼太郎も秀吉を書いている。家康は書かない。それこそが人間豊臣秀吉の人柄をよく表している事実ではないでしょうか?
少年秀吉大海へ出る
世間でよく知られている通り、秀吉は貧しい家に生まれ育ちながらも、その厳しい環境をものともせず、旺盛な生命力と天性の才覚で天下人へと駆け上がっていきます。もちろん「運がよかった」ということも大きなファクターの一つでしょう。しかし、その常人には不可能な「運を味方につける方法」を秀吉は悟っていたのです。生まれながらにして。
信長との運命の出会い
秀吉の運命を決定づけたのは、「織田信長」という大人物に出会ったからに他なりません。信長に出会わなければ、「猿」として終わっていたのかもしれません。有名な「本能寺の変」の報せに接した時の「秀吉の中国大返し」は信長に惚れぬいていた秀吉にのみできえた行動だと思っています。私はよく小説の主人公に自分をなぞらえてみることがあります。時に坂本龍馬になり、時には宮本武蔵になり、と。秀吉の場合も例にもれず自分ならどうするか?自分なら・・・。と思い妄想に耽るのです。しかし、どう考えても秀吉のとる行動には思い至りませんでした。
人間豊臣秀吉とは・・・
秀吉は現代の人々が忘れてしまった何かをもっていたのではないかと思うのです。それは「人に愛される術」です。処世術と世間ではよく話題になりますが、秀吉以上に「処世術」をたくみに操った人を私は知りません。あくまでも小説のなかでは「処世術」として秀吉の策略として描かれていますが、私にはその処世術は秀吉が「天から授かったもの」だと考えています。織田信長しかり黒田官兵衛しかり徳川家康もまたしかり、秀吉を愛してしまったのです。
人を愛するということ
現代人はとかく自分のエゴのために人を愛します。自我を満足させるために人を愛します。果たしてそれは「本当に人を愛するということ」なのでしょうか?この小説を読んで深く考えさせられました。秀吉は信長に尽くしに尽くしました。信長に惚れていました。心の奥底から。だからこそ信長は応えました。秀吉は「人を愛すること」を知っていた。自分の為にではなく、心底から人を愛することのできる人間だったのでしょう。だからこそ誰からも愛された。信長からも、家康からも、黒田官兵衛からも寧々からも、その他ライバルからも、そして庶民にも愛された。翻って、とかく現代人は自我の為に人を愛するふりをします。先日の「女子大生刺傷事件」や「ストーカー行為」などがその類です。人を愛するということは、本来自我のためではないはずです。その点、心底から惚れ込むことのできる主人をもった秀吉は天下一の幸せ者だっったのではないでしょうか?
好きな偉人は誰ですか?
私には好きな偉人がたくさんいます。その多くは主ではなく、誰かに惚れ込み、一途に忠義を尽くした人達です。例えば「島津斉彬と西郷隆盛」の西郷、「近藤勇と土方歳三」の土方、「吉田松陰と高杉晋作」の高杉、「劉備と関羽」の関羽、近年では「吉田茂と白洲次郎」の白洲などです。そして「織田信長と豊臣秀吉」。誰かに一途に惚れぬいた男はかっこいい。惚れぬいた誰かの為に自分の命を尽くすことのできる人生はかっこいい!私はそう思うのです。
まとめ
「情けは人の為ならず」。この言葉を勘違いしている人も現代では多いそうです。「情けをかけるとその人の為にならないからよしておけ」という意味に解釈しているというのです。なんと嘆かわしい世の中でしょう。秀吉は多くの人に情けをかけました。戦国の世の大将でありながら人を殺すことをためらった。他にそんな武将を私は知りません。名将と言われる「武田信玄」や「上杉謙信」、「織田信長」にいたっては人を殺すことを快感に覚える向きもあったように思います。そんな姿勢に多くの武将、士卒、庶民が好感を抱いた。そして天下人へと押し上げられた。私にはそう思えるのです。まさに「情けは人の為ならず」を地で行った人物なのではないでしょうか?自分のことがかわいくない人間はいません。秀吉もしかりでしょう。しかし、自分ばかり愛していると周囲には煙たがられる。現代社会でも秀吉の処世術は通用するのではないでしょうか?自分を愛するように、他人も同じように愛するということ。そして前述の偉人達のように、誰かに惚れぬいて自分の命を懸けてでもその人に忠誠を誓うということは突き詰めれば「人を愛する」ということに繋がってくるように思っています。人を愛し、「情けは人のな為ならず」を実践していればおのずと自分の未来が拓けてくるような気がしてなりません。私もこの小説を読み、実践したいと思っている一人であります。
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