性格分析と演奏分析
音楽とキャラクターのマッチ
キャラクターの描写とBGM、そして登場人物の演奏がみごとにマッチしている。チアキが演奏する曲はどれもどことなくチアキらしいというか、いろでいうところの「黒」に感じられる。演奏のテンポ、演奏方法、特にピアノの演奏では彼の演奏世界を作りだしている。ピアノの演奏家はピアノを弾きながら体を動かしたり、顔の表情を変えたりすることが多いがチアキにはそれがない。彼らしいまじめな演奏スタイルを貫いている。ただ彼を表現する場合、ただのまじめな人というよりも、温和でオンオフがしっかりとできている人と言ったほうが正しいだろう。彼はほんとうに器用で、作品でも分かるがフランス語もできて、専門ではないヴァイオリンも完璧に演奏することができる。ただ、そんな彼でも精神的に崩れやすいところも作品を通して理解できるところに見ている人は親近感を持つことができる。
ノダメについて言えば、彼女の演奏曲も彼女らしいといえるだろう。彼女の演奏方法はチアキとも対になるといってもいいぐらい異なっている。口は丸くし、体もおもいっきり動かし、リズミカルな演奏スタイルである。彼女の性格は変わっている。彼女のピアノの演奏も聴いていて分かるが、彼女の気分によってテンポ、引き方が異なっている。そのようなところは極めて彼女独特のピアノ演奏といってよいだろう。ピアニカを演奏していた曲であるラプディ・イン・ブルーも彼女らしいピアニカが出す高い音を使った演奏方法で観客を盛り上げていた。演奏方法も彼女独自で、お茶目な格好して出てくるところも性格が反映されている。
ミネに注目するとより演奏がおもしろく感じられる。彼の演奏はとても派手で目立ちたがりのところもキャラクターの性格と演奏方法が近い。しかしながら、彼の演奏とクラシックは合っているのかというと疑問である。クラシックはテンポがただ速く、明るさだけを表すものではない。作曲家によっても違うと思うが、どことなく暗い音と、ゆっくりとしたテンポで表現されている曲もたしかに存在する。この二つの理由からもミネとクラシックの印象が合っているとは考えにくい。
総じて、この世界の中での音楽とキャラクター、BGMを対比してみることでまた違うアニメとして見れるのではないかと思う。マスミを例に見ても分かるが、極めて独特の演奏は彼にマッチしていて、非常に興味深い。さらにBGMに注目するとさらにこの作品の深みを感じられると思う。温和なシーンや笑いがでてくるシーンはそれにあったバックの演奏、BGMがなされている。そこが他のアニメと比べてみてもBGMの演奏法が異なっていて、このアニメ独自の演奏方法となっている。その一つ一つのシーンと演奏がキャラクターの発言、性格、行動と見事にマッチしていることにちゅうもくしていただきたい。
取り上げているクラシック曲と演奏方法
このアニメで取り上げられているクラシックの曲はほんとうにジャンルがさまざまで、演奏スタイルが違うのでほんとうに見ていて感動できる。ドビュッシーの演奏ではピアノがほんとうにすばらしく見ているだけでなく、聴いているだけでも楽しませてくれる。最初のピアノを弾く瞬間から惹き込まれる演奏は生で聴いているかのように感じられ、ただアニメを見ているだけは味わえない感動を感じることができる。
ベートーヴェンの第一番はこのアニメの中でも演奏されているが、アニメの中での演奏は明るく、このアニメのテーマにふさわしい感じられる。テンポもちょうどよく、演奏も丁寧で心地よい。オーケストラが一致団結して演奏した曲は印象深く、このアニメといえば「この曲」と言いたくなるような温和な演奏であった。
クラシックの捉え方
クラシックというのは特性上、普通の人にはなじみの薄いものと思う。ピアノを習っている人ならば当然のように、バッハからモーツァルト、ベートーヴェンなどの曲を演奏をした人がほとんどだろう。これらの作曲家はピアノを演奏する上での基盤として教えられ、伝えられている。このアニメではピアノを演奏したことがない人でも聴いたことがある曲が並べられていて、誰でも聴けば楽しめるような曲の構成と物語の構成がなされている。
クラシックは私たちが聴く普通の歌詞がついた音楽とは異なっている。歌詞がついていなくて、ノリもいいわけではないのに何がそこまで人を惹き付けるのか疑問を持つ人が多いだろう。この問題にうまく解答することは私にはできないが、それは音の強弱とテンポ、演奏方法によって物語を表現しているのだと思う。一つ一つの音とリズム、弾き方で表現し、物語を語るように演奏がされているのだと私は考えている。そこにクラシック独自の長所と心をこめられる演奏が成り立っているのだろう。作曲家は一つ一つの曲に物語をリズム、音の強弱、テンポ、演奏方法で表し、演奏している人と聴いている人に伝えているのだろう。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)