痛みや無念を覆すもの
自分と相容れない感覚でも
英国人の患者さんってことなのかな。どんな痛みを持っているのでしょう。そういうお話でした。ハマる人はハマるし、絶賛する人もいるのかもしれないし、妙に自分にフィットして涙の出る人もいるかもしれない。その一方で、ドライに感じる人はドライに見てしまうんだろうなと思います。眠くなる人もいるかもしれません。大筋は他人の恋愛のお話ですから。私は何回もみているのだけど、いつも後者のほうで、子供の時も大人になってもちょっと眠くなる作品です。これはひとえに、自分の成長がないせいで、多分大人になってから見ると味わいが出てくるんじゃないでしょうか、大人味の映画のように思うので。でも、逆に大人になってから見るとがっかりするかもしれない。なんだかちょっと幼稚だななんて。その幼稚さを純粋だ純真だととらえると感動できそうですが、なんとなく興味がそそられない恋愛だなとまた見てまた思ってしまった。手に入れたくても入れられない様々な環境や時代に邪魔されてしまう運命にある恋です。ちょっとしたロミオとジュリエットです。二人が真剣だから、すっかり二人の世界で、見ていても同じところに立てないのがつまらないのかもしれないし、いや自分だったらそんなことはしない、とかもっとこうしてみる、とか考えてしまい、気が合わないのかもしれない。しっとりと詩を読むような気分で見られる日まで置いておいて、また機会があれば見ようか思います。
映画史というより映像史に残りそう
じゃあ、文学だったらもうちょっと眠くならないんじゃないかとか思うのですが、本を閉じた後にひとしきりしみじみとじーんとしたりして、浸れる小説なのかもしれないと。だけど、百聞は一見に如かずと言われるように、本作を映画で見て本当に素晴らしいのが、砂漠の映像。とても美しいです。これは文章では書き表せないと思います。映像がとてもきれい。古い絵画のように深い感動を与えてくれます。これがこの作品の病みつきになるところかと。お話はさておき、絵がきれい。歌詞よりもメロディが素晴らしい曲のように、ただ映像をテレビ画面で流しているだけでも、部屋がそこへ吸い込まれてしまうようなスケールのある映像です。特に、砂漠の夜の美しさは必見だなと、思います。私はストーリーに興味がむいてないので、本作のしっとりした映像の撮り方がどうしても雰囲気を盛り上げるための演出のように感じてしまうのですが、砂漠の美しさは本当に素のもので、そこに人間の気持ちが煙のように絡んでいくのがとても自然体で素晴らしいと思います。とあるワンシーンにこんなに虜にされることも珍しいな、とそんな感じです。絶景ではないのですが、絶景以上に魅力的だなと思います。
小さな人間の大きなインパクト
なんだか嫌だな、と思うシーンもあります。飛行機でヒロインとヒロインの旦那が突っ込んでくるシーンです。何回見ても、何なのかわかりません。旦那さんがムカついていることは分かりますが、あまりに無理やりすぎるなあと思って、シリアスにとらえられない。どうしても、「何なんだ、バカみたいじゃないか」と思ってしまいます。一見、命と愛を強く意識したシーンのようでもありますが、いや、やっぱり変だなと感じてしまう。こういうところで、ロマンを感じないと人としてつまらないんじゃないか、などと自分のことを疑いますが、やっぱりだめで、からかって笑いたいような衝動さえ出てきます。そういう無理やりな行動をとる背景には何があるのでしょうか。ただの絶望や嫉妬にしては、この旦那はバカすぎる。何か鬱状態になるような時代背景があるなら、もう少し探りたい気がしますし、わかりやすくして欲しいなとも思いました。恋をする二人にとってはなかなかラッキーな展開ではありますが、ストーリー展開の為にこんな驚きの行動を取るというのもちょっとどうなんだろう。けれど、案外現実の方が「小説よりも奇なり」というそれなのかもしれません。物語色の強かった本作が、このへんてこりんな展開のせいで現実的に感じられたりもします。この旦那については、あまり触れられません。ただ妻を彼なりに愛していたのだろうな、と捕らえる他仕方なく、あまり深く考えたくないキャラクターだなと思います。せめて誰かに可愛そうだと思ってもらえたらいいのですが、二人の恋を盛り上げてしまっただけのような、無駄な死には、だから嫌われるんだよ、と思わずにはいられない。男性って困るなあ、なんて後味の悪い嫌なシーンです。彼に共感される方がいても勿論いいし、ヒロインを悪く思う人もいるのかもしれないし、こんなに愛されて羨ましいと思う人もいるかもしれないし、実はいろんな考え方が人それぞれで表出してくるインパクトの強いシーンでもあります。
恋が何か
残念なのは、ハッピーエンドとならないところですね。彼女を洞窟から救い出せなかった。お姫様抱っこをして帰ることは出来ましたが、彼女は死んでしまっていました。そして、自分の死に際に、彼女が死に際に書いた手紙を読んでもらうのです。けだるい感じです。ある意味ハッピーエンドなのかもしれませんが、とてもくたびれてしまって、それで終わってしまったんだなあと。そういう人生の苦さをみて、甘美な気持ちになることもあるかもしれませんが、やはり、何とも釈然としない。人生ってそんなものなのだろうか。これは、恋愛が成就して幸せな家庭を作れて、そういう人が見るための映画だったのかもしれません。本当に苦い経験をした人たちへの慰めになる映画ではないように思います。ただひたすら現実的なのに、なぜこうも「物語」な仕上がりになるのか。それは、主人公の「思い出」を映しているからなのではないでしょうか。大好きな人と一生懸命恋をするのは、戦時中だろうと何だろうと、関係ない。ただ生きているときの生きている証なんだなと感じます。ヒロインの身にしてみれば、なんだか旦那も恋人も、まあまあだったなといったところかと思いますが、男性の理想の女性とはそういう気持ちを表に出さない聖女のような人物なのだとも思うのでした。それに、恋の思い出は恋よりも美しいのです。それは死に向かう時の勇気になるんじゃないかと思います。生きていて、恋をしないのは勿体ないことですね。
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