誰もが知っていてほしい作品 - 誰も知らないの感想

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誰も知らない

4.714.71
映像
4.64
脚本
4.50
キャスト
4.29
音楽
4.71
演出
4.86
感想数
7
観た人
9

誰もが知っていてほしい作品

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
1.0
音楽
4.0
演出
5.0

目次

家族の中

初めてこの映画を観た時、柳楽くんの自然な演技に驚きました。演技と呼ぶんだろうかと思うほど、彼は映画の中に入り込んでいました。そして長男という役割をきちんとこなすのです。母親からの信頼は絶大で、彼ではなくもし長女が一番上だったら、こうも親子関係が良好だったか定かではありません。彼は母親のことも弟妹のことが大好きで、家族で囲む食卓を愛していました。決してあれが欲しいこれが欲しいとわがままを言ったり、周囲を困らせることはしません。それはなぜか、外の世界を知らないからです。友達がもしいたら、みんなが流行のものを持っていれば欲しいと思いますし、たまたまキャッチボールさせてもらって触れた野球というスポーツに興味が湧きます。そういった外からの刺激を何も受けずに成長しているから、彼は無欲なんだと思いました。私たちは日々色んなことから情報を得て、外へ出て刺激に触れ、普通に暮らしています。しかし、彼ら兄弟にとったら家の中が全てで、完結してしまっています。長男で聞き分けよく兄弟の面倒を見て母親を気遣って、よくできたお兄ちゃんでも、あまりにも子どもとしての感情に乏しい人間であることに間違いはありません。全てが悪いわけではなく、色々なものに揉まれた上でお利口さんなら問題ないのです。何もないことで作り上げた良い子というのが悲しさや悔しさを感じさせないほど衝撃的な事実なんだなあと思いました。

事件解決せずに終わる

一通りこの家族のあり方を見せて、誰も知らないところで誰も知るはずもないまま死んでいった子どもがいて、子どもが大きくなっているという事実を突きつけ、そしてそれでも日常生活が変わらずに過ぎていく様子を映して終わります。コンビニの裏で店員さんが廃棄のお弁当を渡している様子が現実的で、表ではお金を出して好きなものを食べたいものを選ぶお客さんがいて、裏では生きるための食事として小さな子どもが廃棄のお弁当をもらっている。その表と裏が紙一重の距離に存在するのに、誰も知らないんです。確かに、家庭の事情なんてそれぞれなので、仲の良さそうな夫婦が実は離婚寸前の仮面夫婦だとか、それは本人たちが言わなければわからないことです。それと同じで、子どもが外へで歩いていても、あの子は戸籍がない子だとか、妹が死んでしまって遺棄したとか、外から見てわかるわけがないのです。多少服装や見た目で想像することはあっても、そこを突っ込んで事情を聴きだす人はなかなかいません。そんなことが実は身近に普通を装って潜んでいるかもという警告が、事件解決せずに映画を終わらせた構成に込められているのかもしれません。人は変わっても、こういった誰も知ることのない事件に終わりがないのです。

笑顔

子供たちは笑っています。みんな楽しそうです。多少部屋が汚くなり臭くても、子供たちはそれが当たり前ですから、笑って過ごします。そして、みんなお母さんが大好きです。子どもはどうしてこうも親を疑わず安心と好意を寄せ続けるのでしょうか。わかりません。家に帰ってこない母親を、生活を共にしない母親を、どうして嫌うことなく絶対的な存在として好きなままでいるのでしょう。母親の知恵のなさと奔放ぶりには怒りが湧きました。しかし、youさんが演じているのですが、屈託のない笑顔や悪気なく好きな人ができちゃったと伝える様子から、子どものことを子どもと見ていない。自分が時々安心したいがための存在でしかない。ようは子どもと一緒です。不思議な安心感を抱いています。罪悪感もなければ、後ろめたさもない。その考えがあれば戸籍がないままポコポコと次々生むはずがありません。母親は子どもたちの笑顔を見てどう感じていたのでしょう。責任感も使命感もなく、可愛いと愛でるだけのぬいぐるみのような存在だったんでしょうか。子どもたちの安心しきった笑顔に、胸が裂ける思いでした。

実話がある

母親は事件発覚後、逮捕され、三年の実刑を受けています。確か執行猶予もついたと思います。この判決から、子どもたちの苦しみ抜いた生活が3年という短い期間だけで償えてしまう事実に衝撃でした。戸籍がないからなのか、それとも保護者としての責任はそんなに軽いものなのかとこの映画から実話を知って考えました。そんなに罪に問われないのなら、まだまだ遊びたい親たちは平気で子どもを置いて出て行きます。現在では行政の介入もあり、誰も知らないまま子どもたちが亡くなるということを防ぐ動きが見られ、不幸を減らすことはもしかしたらできているかもしれません。当時だからこそ刑も軽く済んでしまったということもあると思います。現在長男は30を過ぎているでしょう。もしかしたら家庭を持っているかもしれません。この異常な日常から抜け出し、時間と共に心の傷が癒えていることを願います。このような事件があることを映画という作品にして世に送り出した是枝監督の構成力、伝える技術の高さに、この作品に出会えたことを感謝したいです。

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他のレビュアーの感想・評価

子供たちのキラキラした姿が印象的

実際起こった事件を題材に作られた映画。実際の映画とは少しだけ内容が違うようですが…恋多き母は自由奔放、4人の子供は全て父親が違うというところから彼女の恋愛に対する奔放さもよく分かる。最初は普通に生活していたけれど母には好きな人ができてしまう。その日をきっかけに母はお金を長男に預け家には帰らなくなってしまった。母から時々送られてくる生活費で何とかやりくりしていくが次第にお金も底をついてしまう。子供だけの生活だから掃除や洗濯もままならない、もちろん食事も。そのうえお金もなくなってしまうという本当にどうしたらいいのだろうか?という状況に追い込まれていく。ある時、一番下の女の子が亡くなる。その遺体をスーツケースに入れ電車で運び、埋めてしまう。そのシーンの後、残った子供たちはまた笑顔で生活しているのが何とも言えず胸が苦しくなった。自由奔放な母を責めることもなく生きて行く子供たちを観てどうしていい...この感想を読む

5.05.0
  • もりぴよもりぴよ
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  • 427文字

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