誰も知らないの感想一覧
映画「誰も知らない」についての感想が7件掲載中です。実際に映画を観たレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
誰もが知っていてほしい作品
家族の中初めてこの映画を観た時、柳楽くんの自然な演技に驚きました。演技と呼ぶんだろうかと思うほど、彼は映画の中に入り込んでいました。そして長男という役割をきちんとこなすのです。母親からの信頼は絶大で、彼ではなくもし長女が一番上だったら、こうも親子関係が良好だったか定かではありません。彼は母親のことも弟妹のことが大好きで、家族で囲む食卓を愛していました。決してあれが欲しいこれが欲しいとわがままを言ったり、周囲を困らせることはしません。それはなぜか、外の世界を知らないからです。友達がもしいたら、みんなが流行のものを持っていれば欲しいと思いますし、たまたまキャッチボールさせてもらって触れた野球というスポーツに興味が湧きます。そういった外からの刺激を何も受けずに成長しているから、彼は無欲なんだと思いました。私たちは日々色んなことから情報を得て、外へ出て刺激に触れ、普通に暮らしています。しかし、...この感想を読む
子供たちのキラキラした姿が印象的
実際起こった事件を題材に作られた映画。実際の映画とは少しだけ内容が違うようですが…恋多き母は自由奔放、4人の子供は全て父親が違うというところから彼女の恋愛に対する奔放さもよく分かる。最初は普通に生活していたけれど母には好きな人ができてしまう。その日をきっかけに母はお金を長男に預け家には帰らなくなってしまった。母から時々送られてくる生活費で何とかやりくりしていくが次第にお金も底をついてしまう。子供だけの生活だから掃除や洗濯もままならない、もちろん食事も。そのうえお金もなくなってしまうという本当にどうしたらいいのだろうか?という状況に追い込まれていく。ある時、一番下の女の子が亡くなる。その遺体をスーツケースに入れ電車で運び、埋めてしまう。そのシーンの後、残った子供たちはまた笑顔で生活しているのが何とも言えず胸が苦しくなった。自由奔放な母を責めることもなく生きて行く子供たちを観てどうしていい...この感想を読む
たくさん考えさせられました。
巣鴨子供置き去り事件を元に制作された作品ということと、当時柳楽優弥さんが史上最年少および日本人として初めての最優秀主演男優賞を獲得したことなどから、とても興味深く拝見させて頂きました。是枝監督がインタビューで『母親役を演じたYOUさんには、あえてとてもチャーミングに明るく悪気が無いような演技をして欲しい』と演技以来をしたとの事ですが、映画の中のお母さんがした事は、本当にとんでもない事で、最低な事でしたが、子供達がそれでもお母さんの事が大好きで、待ち続けている・・という設定が理解できるような気がしました。こんな悲しい事件は、絶対起こって欲しくない。そして、子供をもつ方は、大人とて、親としての責任を持ち、産まれてきた命を大切にして欲しい。そう改めて思いました。
こんな事件はつらい
実際に起きた事件の映画化。子供を可愛がっているようで、自分が一番かわいい母親ってよくいると思うけど、ここまでひどいのはなかなかいない。こういう事件が二度と起きないように、母親になる人間がもっとしっかりしてくれるといいなと思う。実際の事件の映画化とはいえ、ストーリーの美化はされている。子供たちの演技がとてもすばらしい。台本なしで撮るという方法がこういう雰囲気を生み出しているのかもしれない。追い詰められた人間の映画はよくあるけど、追い詰められた子供たちの映画はなかなかない。これから母親になる人や、子供に携わる仕事をする人に見ておいてほしい。
子供が幸せに生きる権利を奪わないで、と本当に思った
この作品を観た後、巣鴨子供置き去り事件について調べてしまいました。調べずにはいられなかったというのが本音です。出生届を出されていない子供たち、無責任な母親、ネットで見つけた記事を読んでいて気持ち悪くなりました。衝撃的でした。一人で観てしまい、めちゃくちゃ凹み、考えさせられ、涙しました。映画は事実よりは綺麗にまとまっているのかもしれません。でも、伝わるものがたくさんあります。とにかく、子供は幸せにならなきゃいけないと強く思いました。幸せに生きる権利があるんだから、親が守るのはもちろん当たり前だけど、周りの大人も無関心じゃだめだと思いました。
受け止めるためにはかなりの力がいる
本作で柳楽優弥くんはカンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞し、日本でも話題になった作品。確かに、彼の演技も子供たちの笑顔も眩しくて、映画としての完成度は高いと思う。けれどだからこそ感じるのは、元になった事件のことを深く深く考えさせられてしまう。是枝監督作品では「それでもボクはやっていない」を観たが、両方に共通するのは、観ている方がため息をついてしまう程細かく作り上げる手法。そして、「あなだだったらどうする?」と投げかけられる強いメッセージに目を背けたくもなってしまう。ストーリーの重要な場面で流れる、タテタカコさんの「宝石」は今聞いても泣いてしまう。それほどすごい映画だ。
たぶん二回は観ない(いい意味で)
台本通りの順番に撮影される映画ってそう多くはないと思いますが、この作品はそれに一層強い意味がある気がした一本です。4兄妹が母親と暮らしていたアパート。母がいなくなって、お金だけが幾らか置いてあって、それだけ。子供だけだから、栄養の足りた清潔な暮らしの継続なんて難しい。「どうしようもなさ」に蝕まれていく兄妹。悲しいって思いだけでは片づけきれない気持ちで観ました。随所に見える子供ならではのキラキラした生命力が、もうほんと余計せつない。劇場で、この家族のことだけ考えて上映時間を過ごすの、結構しんどかったです。挙句、あんな展開ですよ。もうこれは見届けなければならない、って思わせた作品。