親子の絆
卵の緒が親子の証
育生に「親子の証であるへその緒を見せてほしい」とせがまれた母親の君子は、
自分は卵で子供を産んだと言い、卵の殻を親子の証であると育生に見せる。
納得しない育生を君江は思いきり抱きしめる。そしてこれが親子の証であると伝える。
自分たちが、実は血が繋がっていない親子であることを育生に打ち明けるとき、
君子は「誰よりあなたを好き」「尋常じゃなく愛している」と伝える。
母親の君子は子供である育生への愛情をわかりやすく言葉や態度で伝えている。
親の子供に対する愛情
私がこの本を初めて読んだのは、独身の時だ。
君江から育生へのストレートな愛情表現に心を動かされた。
もし、これから自分が結婚・出産して、子供を育てるときには、
君江のように適当なことを言いながらも、わかりやすい言葉で愛情を伝えたいと思った。
現在、私の娘は4歳。親になると子供に対していろいろなことを思う。
育児の最終目標は親がいなくても社会で生きていけるようにすることだ。
赤ちゃんのころはお世話に明け暮れるが、年齢を重ねていくごとに、少しずつ社会性を身につけさせなければならない。
子供に対する愛情、それは様々な形で表わされる。
私の母は教師だった。幼い頃から勉強はしっかりやらされた。
1度やれば良い問題集を3回繰り返してやらなくてはならなかった。
学生時代の門限も早く、厳しく、友達と同じように遊ぶことができなかった。
皆がカラオケやボウリングに行く中、1人だけ行けず、仲間外れにされるのではないかと不安になった。
大学では資格を取ることを強要された。
今となっては、学歴や資格が仕事で役立っているので感謝するばかりだが、当時はかなり反発した。
大人になってから、親になってから、初めて感じることができる親からの愛情もあると思う。
今、伝える
人が感じることができるのは「今」だけだ。
言葉は思いを相手に伝えるためにある。そのときの思いをわかりやすく伝えたい。
そうして思いを伝えあって作られた関係が、絆の深いものとなるのだと思う。
親になった今も、時々この物語を読み返す。
4歳の娘は自己主張が激しい盛り。どうしても注意したり、諭したりすることが多くなってしまう。
注意したり、諭すのも、もちろん娘を思ってのことだ。
でも、そんな注意も躾も、人間としての信頼関係ができているからこそ、受け入れられるのだろう。
親子の絆をしっかり作っていくために、愛情をわかりやすく言葉や態度で伝えることを、
忘れないようにしようと思う。
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