【サクラ大戦】彼女達の生き様を考察
少女達の戦いは恋愛ドラマで片付けてはならない
私はゲーム版をプレイしてからの鑑賞でした。全体の流れはゲーム版と相違ありませんが、ゲーム版と比べてアニメの方がシビア。戦いに身を挺している少女達の心情を考えると、ゲーム版以上にリアルな心理描写です。彼女たちには肉体的な休息はあっても精神的緊迫感は常につきもの。恋愛要素を排除することでその緊迫感はリアルなものとなっており、より彼女達の成長を感じることができました。常に不安を顔に浮かべている彼女達。ゲーム版と比べて普段の生活の描写が少ないためか、笑顔が少ない印象を受けます。意図したものかは不明ですが、私生活を多く広げないことによって彼女達の緊張感や戦闘シーンにもリアリティが出ており、帝都の平和を守らなければならないという気持ちが根底にある姿を常に映すことに成功していたように感じました。
私の考える最も魅力的なキャラクター
性格、ルックス共にキャラクターの被ることない個性的なヒロイン達が登場しています。私のイチオシはロシア人のマリア・タチバナ。金髪にすらっとした長身、そして女性でありながら男性以上にかっこいいルックスに性格。銃を片手でこなす姿。私には到底叶えることのできない理想の女性そのものです。一見あまりにも自身とかけ離れすぎていて、初見の私は「所詮アニメのキャラクター」という印象でした。そういうキャラ設定って、急にリアリティが薄れてしまって物足りないんですよね。ですが、そんな第一印象を彼女はいとも簡単に崩壊させました。彼女の抱える心の闇が、私たちと同様だったからです。
彼女は隊、劇団共にトップの座におかれているという孤独感や責任感を一人で抱えながらも、その辛さを見せないよう気丈に振舞っています。その姿は「自分」を押し殺して生きていかなければならない現代社会そのものを体現しており、最も人間味に溢れていました。過去の自分を常に後悔する彼女が、サクラや大神との出会いの中でやっと過去の出来事として割り切ることができるようになっていく姿は彼女達の生活と縁遠い私たちですら感服するものがあります。彼女の性格にどっぷりと感情移入していた私は、TV第9話のマリアの笑顔を見たその時、まるで自分もわだかまりが取れたようなすっきりとした気持ちになったのを覚えています。過去の自身の「黒歴史」を蓋を閉じずに向き合い、許すことは誰もが理想とする到達点であり、そういった姿を見せることでマリア・タチバナという人物は尚魅力を増します。彼女の魅力は私たちの理想を実現し、叶えてくれる点にあるのです。
ゲーム版で満足したら、アニメ版でもう一度。
アニメ版は話数の都合やゲームの性質上ゲーム版の内容を省略している部分も多くあります。そういった性質からゲーム版をプレイするための予備知識として見てほしいと言われがちですが、私はむしろ「サクラ大戦」という作品を補完するために必要な要素であり、新たな可能性を見出すために見る作品であると考えます。アニメで予備知識を蓄え、ゲーム版をプレイ。その流れが悪いものだとは思いませんが、是非またアニメ版に戻っていただきたい。ゲーム版は常にドタバタでコメディ要素が強いからこそ、アニメ版で少女達の「リアルな」戦いを顧みるべきだと思うのです。その一連の中でサクラ大戦という作品はただの恋愛ゲームという枠を越え、戦いが与える苦悩を私たちに伝える「ヒューマンドラマ」へと進化するのではないでしょうか。
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