最もタイトなスーツを着たボンドが現れた
多くを語る無口な男
これまでの私の中でのジェームズボンドのイメージは、ショーンコネリー、ロジャームーア、ピアースブロスナンでした。この方々が演じたボンドは、とても饒舌で、女を口説くときも敵に迫るときも、よく喋り雰囲気で持っていく感じがありました。そのため、あまりボンドにばかり気をとられていると、周りで起こっている動きや流れを見逃す時があるという印象です。雰囲気もゆったりしていて、どんな窮地でも超人のように難を逃れると言う印象でした。ですが本作のダニエルクレイグ演じるボンドは、ボンドにしてはとっても無口なのにも関わらず、ちょっとした感情の起伏や心の変化が、映画全体を通してよく分かるようになってるなと感じました。そして決して超人ではなく、しっかりと窮地に追い込まれます。ちゃんと拷問を受けるはめになったりします。生身の人間としてのジェームズボンドらしさみたいなものは、この作品がピカ一だなと思いました。
ジェームズボンドなのに口説くのが下手
以前までのボンドと言えば、甘い言葉を囁いて甘い雰囲気を作り上げて女性との情事に持ち込んでいたわけですが、本作のボンドは、わざわざ女性が言われたくないようなことを言ってみたり、小馬鹿にすることを言ってみたり、とても口説いてるようには思えませんでした。ですがここぞという時に女性を誉めたり、正直になったり、気付けば女性の心を丸裸にしてしまいボンドに惹かれてしまう、という状況を作り出すのが上手いなと思います。できたら私もボンドに悪態つかれてみたい、私の心を丸裸にしてーと思ってしまいます。こんなにも以前のボンドとの恋愛スタイルが異なる新しいボンド。それは現代の女性の口説かれ方の好みが変わったことの表れでしょうか。
好みと言えばタイトなスーツ
最もタイトな雰囲気を持った、最もタイトな恋愛をした、最もタイトなスーツを身にまとったカジノロワイヤルのボンド。ここしばらく何年もタイトなスーツが流行している影響ももちろんあると思います。ですがただ流行りと言うだけでなく、ボンドのタイトな恋愛、無駄口をきかないタイトな雰囲気を持ったボンドだからこそ、タイトな無駄のない美しいシルエットのスーツが映え、あえて相乗効果を狙っているのかなとすら思えました。とにかく無駄がなくて本当に格好良いです。ボンドの激しいストイックなアクションに応じて、スーツに入るシワや立体間がとても美しいです。
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